怒り
クリエは次の瞬間、あわをふいて意識を失った。そうして30分ほど意識をうしなっていたが、30分たつと立ち上がり、ぼーっと何事もなかったかのようにさっきの出来事をわすれたかのようにずれた椅子をかたずけ、コーヒーをいれて、またテレビをつけて、笑いはじめた。
「ワタシの友達」
頭の中で、その言葉が響くまで、彼女はその怨霊に支配されることなどなかった。
「ワタシの友達の痕跡、ソコヘいけ……」
頭の中に声が響く、そのたびに、体全体を何かに圧迫されたような感覚があり、何か使命感のようなものが思考を支配し始める。
「お前はワタシの手足、憎きモノを排除する、友達のところへいくのだ、彼女の能力……が……」
ふとクリエの頭の中にクオンの部屋のイメージが浮かぶ。そして彼女こそが、この声のいう“友達”に関することだろうと直感的に理解した。クオンの事を考えると、のどが渇く、その渇きを満たすには、この声のいう通りにしなければいけない、そんな考えが頭を支配した。だがこの声が何をしたいかはわからなかった。支配されると同時に、彼女の想いも強くなっていく。
(アールを襲った人間をとっちめなければいけない、アールを守らなければ)
彼女の中に相反する二つの感情がうまれた。
“コツコツコツ”
誰かが階段をのぼり、ある程度のぼりきったところで平坦な廊下を歩く音が聞こえる。それはどこか遠い世界の出来事のようで、しかし感覚的には自分に近いような気がしていた。
“私は、どこにいるのだろう”
そう考えると感覚は鮮明になり、自分の手足がそこに、その物音の直ぐ傍にある事が理解できた。
“まさか、私がこの足音の正体?夢遊病にでもなったのかしら”
そう考えていると、ふいに先程までの記憶がよみがえる。
“私は、妙な影に……そうだ!!アイツに襲われて!!”
先ほどの恐怖が突然頭を支配し、叫び声をあげそうになる。しかし声はでず、かわりに体はうごかせた。視界はせまく、ただ手足がみえるのみ。手を自分の目に近づけると、その手は黒い影、あいつによくにた奇妙な影で覆われていた。
“そうだ、私は……私ワ……”
ふと視界がすべて開けたと思うと、自分を客観的に見ている自分の感覚にきづき、そしてようやく理解した。大家クリエは、あの影と一体になっており、体中すべてが黒い影に覆われており、不気味な笑みを浮かべていた。
“私ワ……あの少女にあわなければ、名前は……クオン、私の友達の関係者”
頭の中でもう一人の人格が、自分の思考を支配する、だがクリエにはどうしようもなかった。
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