接触
「ニヤアア」
振り返った人影は、女の姿かたちをしていることがわかったが、顔つきや表情ははっきりとわからなかった。ぐにゃりとした奇妙な感触がしたかとおもえば、クリエが肩にのばしたその手はその影をするりとすり抜けていった。
「あ、あんた……あんた、何者だい?」
ふるえるくちで、なんとか言葉を紡ぎ吐き出した。
「ワタシ?ワタシは……“彼女”の友達、私ワ……」
すると、その人影は頭を抱えて、腰をおとし、ワナワナと震えはじめた。
「アレ、を倒さなければ、アレを……彼女のために、アレを、彼女……」
「お、おい……」
まだその影が、人かひとの偽装した“何か”だという可能性を捨てきれなかったクリエは、その人影を心配して手を伸ばす。
「ウ……ウ……ウウ!!」
すると、人影は突然上をみあげクリエの手をみつめた。
「この女……、この女をツカオウ……彼女の匂いがする、私の友達」
ふと、クリエが女の影にみつめられた自分の手を見つめると、女の影は手を伸ばし、次の瞬間、霧状になり、竜巻のように回転しながら、彼女の手の中へすいこまれていくように消えて、クリエはその瞬間、体全体に悪寒が走り、何か体を別の生命が走り回っているかのような感覚に襲われた。
アールはふと病室の前で奇妙な動作をしているクリエに気づき呼びかける。
「クリエ?どうしたの?」
しばらく動かず、だが、何度か呼びかける。
「クリエ、クリエ?」
一瞬、自分が襲われた時見た人影のような奇妙な関節の動きをしたかのようにみえた。そしてその影が彼女を覆っているような。
「ク、クリエ?クリエよね?」
「……?」
ふいに、まるまっていた姿勢をただし、まるでいまめをさましたかのように、両手で頬をたたき自分の手を見つめるクリエ。
「私……今何を……変なものを見た気がしたのだけど」
「クリエ、よかった、いま突然妙な動きをしたようにみえたから」
「??妙な動き?」
「あの時、私を襲った亡霊みたいな……」
「……」
ふと、病室の中へむかう脚をとめるクリエ。
「まさか……そんなもの、本当にいるわけないじゃない」
クリエはベッドの直ぐ傍にすわり、手を伸ばし、アールの手を握った。
「私が必ず犯人を見つけるから」
「え、ええ」
アールは、クリエが自分の話を信じていないことをおもい、少し落ち込み気味にうつむいてわらった。
その後、クリエは家に帰った。家で夕食の支度をしている時に、異変はおきた。
“バキ……”
「??」
大きな家鳴りがする。
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