調査。

 翌日からクオンの必死な調査が始まった。件の少女“ミラ”に関連する場所を、オリエラの記憶を頼りに探し始めた。何しろ家族はすでに引っ越しているし、個人情報にかかわるものは昨今中々調べることはできない。オリエラはいつからか柔和な感じになっていったし、クオンは今度こそなかのいい友人ができるのではないかという想いもあった。どこか、心の底にはそうした魂胆がないといえばウソになる。けれど、そうした思いに駆られるときには、仕事、というより自分の能力に関する矜持のようなものを思い出すのだ。私情でそれを汚してはならない。

“能力を持つものは、能力を持たぬものとの懸け橋にならなくてはならない”

昔から人と関わることが極端に少なかった彼女がどうして、人の事をこれだけ考えることができ、人に共感する気持ちや感情をもつことになったかといえば、彼女は空想の中で、常に人をもとめ、人に何かをしてあげることを考え続けて、期待し続けていたからだ。それが有償であれ、無償であれ、自分の得意な事によって人にコミットメント出来ることはうれしいことだ。両親は自分を心配しつづけていたが、クオンはいまだにコミュニケーションが得意、あるいはその運に恵まれているとはいえないが、ただ、その一点において人とつながれる気がするのだ。

 だが、ソネーユの態度は少しちがっていた。

(また厄介なことに手を突っ込んで、それも無償で、彼女の疑いが本当に晴れたかどうかなんてわからないのよ)

 そう諭す。だがクオンには見えていた。自分が幼いころから見えていた、孤独な自分のよすがとすべき空間、過去、記憶、人の意識の断片に振れることで、彼女が嘘つきではない事を確信していた。

(まあ、それはあなたの能力は特別、妖精の私が一目おくくらいだから特別すぐれたものなのよ、それとこれとは別だけど、すきにしてもいいけど、ちゃんと私にもお伺いたてなさいよね、ふん)

 そういいつつ、ソネーユはなんだかんだクオンの手伝いをしてくれたし見守ってくれていた。困難なことがあれば手助けをするし、クオンが間違いそうな時にはちゃんと叱ってくれる。そんな相棒がいるからこそ、それほど没頭できたといえる。だが1か月もするころ没頭しすぎで、日常に支障をきたしてきた。

「幼い彼女たちの、友情の意味を見抜かなきゃ……」

 そうつぶやくクオンを見て、ソネーユは確信した。

「あなた……あの子たちに、幼かった自分を言重ねているのね」

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