空地

 その場所は空地になっていて、もの悲しい雰囲気と空地の看板だけがたっている。

「彼女の病気がひどくなってから、彼女には会いに行けなかったわ、一番仲が良かったのに彼女のことを人前でかばうことなんてまったくしなかったから、どこかに罪悪感があったのでしょう……小さなころだったけど、あんなに気が合って、私のことをわかってくれる人は他にいなかったのに」

 彼女は両掌を腹部で重ねて、落ち込んでうつむいた。

「気づいたのよ、あれから私自身が悪霊みたいに生きてきたって、そのことにきづいてから、彼女が私のくびもとを強くにぎりしめて、“逃げるな、逃げるな”って呼びかける夢をみるの、最近みる奇妙な夢だって、私への何かの罰なのよ」

「奇妙な夢?」

「おかしな事だけど、私に霊能力があったような夢をみるの、小さなころ、彼女と一緒に不思議なものをみていたような、それに最近、ここいらで霊能者を狙った事件が多発しているでしょう、それを襲う悪霊の夢をみるの」

「……まさか……あなたが?」

「そうじゃないわ、だって夢だもの、信じてくれるでしょ?私は罪悪感を抱えて、許しを求めてはいるけれど、私が霊能者を恨む必要なんてないじゃない」

「それは、確かにそうですね」

 会話をしながら、クオンは少し意識の断片にアクセスしようとした。

「うっ」

「どうしたの?」

「いえ、なんでも」

 彼女の夢の記憶にアクセスすると、確かに彼女の言う通り、悪夢の断片を見る事ができた。彼女は確かに悪夢をみているが、それはどこか俯瞰で、第三者としての視点のようだ。それに、彼女の首を絞める友人の姿をみたが、それも奇妙だった。恨んでいるというよりは、正義感に燃えているような、真剣なまなざしだったのだ。

(何か、もう少し背後関係が明らかになれば、この複雑な事件の関連性が見つかるかもしれない、けれどできるだけ彼女を巻き込まないようにしたい)

「オリエラさん、私心当たりがあるから、この件についてもっと詳しく調べてみるわ、もしかしたらあなたに何か手伝いをお願いするけど、いいかしら?」

「ええ、それはかまいませんけど……」

 オリエラは言葉につまって、言いづらそうに続けた。

「依頼料は……」

「ふふ」

 クオンは意地悪くわらったあと、優しく答えた。

「いらないわ、この件は、もっと複雑な背景を持っていると思う、この件の解決、それはあなただけではなくもっと多くの人間を助けたり、事件を未然に防ぐことにつながるかもしれない」

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