ミラ
「私は、彼女が学校で人気ものになるずっと前から、彼女の能力を疑わなかった、目に見えることはないけれど、彼女がいうことすべては事実ではなかったけれど、その微量の能力を信じ続けてきた、それはひとつには私が、いずれどこかで何らかの形で、母親と再会することができると思い込んでいた、願っていたからかもしれないわね」
オリエラが案内する場所は、オリエラの自宅から遠くない場所だといい、一度オリエラの自宅で休息をとることになった。その間も彼女は話をつづけた。
「彼女を通して、私は母親と再会した、ヴィジャボードの前でだけだったけれど、たしかに、ヴィジャボードは私しか知らない事をいいあてた、母と私が守っていた秘密の暗号や、私と母が父にだまって隠しておいたへそくりの場所など」
オリエラは自宅にクオンを招くと、お茶をだし、茶菓子を進めた。だが、クオンは彼女の話に夢中になった。
「確かに、オリエラは私と母とをもう一度で合わせてくれた、これは本題と関係ないかもしれないけれど、私はどこかで想い続けていた“足りない”と、いまもどこかで想い続けているのかもしれない、私の母は優しかったし、母と過ごした時間はあまりにも少なかった、だから彼女の能力に足りない所を感じていたのかもしれない、けれど彼女は確かに奇跡を見せてくれた、そこにいるのに、触れることはできないし見る事はできなかったけれど、彼女は対価を認めることもなく彼女の力をふるまったわ、私にももちろん、他の人にもね」
そこで、突然オリエラが頭をかかえた。
「どうしたの……?」
「何か……忘れているような……奇跡について、いや、それ以外にも……」
一瞬、クオンも彼女の記憶に振れた気がした。だがいうことをためらっていると、オリエラから尋ねられた。
「どうしたの?何かみたの?」
「いえ、何か……白い部屋で、あなたに暗示をかける人間が見えたの……それが本当に起きたことなのか夢なのか、あなた自身の記憶があいまいみたいだけど、ぼんやりとした記憶、残留思念をよみとったわ……」
「白い部屋……」
「覚えがある?」
「いいえ……まだ思い出せないわ」
クオンは少し窓の外をみて、コーヒーをのみほすと
「まだ何か、隠された秘密があるのかもしれないわね、この件には……」
そうして一息つくと、やがて二人は準備をととのえ、目的の場所へとむかった。
「……」
「ここが、はじめに彼女が住んでいた場所……記憶はおぼろげだけど、住所はちゃんと覚えていた」
到着する。もうすっかり冬になって二人の吐く息は白くそまっていた。
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