介入。

 異変が起きたのはその次の日からだった。大家のクリエが、頻繁に仕事場に尋ねてくるようになった、何があるともなしに、とにかく頻繁に。大丈夫?とか、元気?とか、昨日はありがとうね?とかこれまでそんなことはなかったにも関わらずだ。初めは、純粋に感謝や、クオンに何かがあったのか心配しているだけかとおもえば妙にそわそわしているし何かいいたげな雰囲気もある。だがもぞもぞして核心をはなしたがらない。

「何のようなのよ、アイツ」

 ソネーユは、いらいらしてその様子をみていた。

「どうしたんだろうね?」

 まあ、クオンの店はそれほど繁盛しているわけではないので、それほど問題もなかったが。占い、霊視、予知、予言。それほど人が信用しているわけではない商売というのは、別段儲かるわけではないのだ。それでもクオンがこの仕事を依り代にしているのは“両親とつながっている感じがするから”、確信めいたものがあるわけではない、ただ両親は自分の事を、この不思議な能力を否定していなかった。それどころか

“病気の代わりに神から授かった特別な力”ともてはやしてくれた。家でできることは色々したが、妖精を見ること、それによる霊能力のめざめ、あとはお絵描きくらいが身についた数少ない能力だった。

 それはともかく、クリエは何かいいたげに、というより偵察するかのようにクオンの様子をみていく。さすがに仕事中に邪魔されることはなかったが、奇妙な距離感や奇妙な様子に、たじたじになりながらも、クオン自体も異変を強く感じていた。

「うーん、ちゃんと聞いてみようかな」

「お?コミュニケーション下手のクオンちゃんもついに決意しましたか」

 ソネーユが片手を枕にして寝ころびながら茶化す。

「もう、からかわないでよ!」

 と、珍しくクオンが強くでたのだった。


 その日は丁度火曜日だった。大家のところにいくと大家クリエは何か戸惑ったような、期待していたような表情を浮かべる。だがすぐに表情を整え、何事もなかったように取り繕うのだった。

「いらっしゃい、クオン」

「こんにちは」

 しばらくクオンは、クリエさんとたわいのない話をしていたが、クオンの方から、この前の話に話題をうつし、それからこうきりだした。

「アールさんが入院してから、クリエさん少し様子が変わってませんか?私のところに頻繁に遊びにきたり、何かいいたいことを我慢しているかのような、そんな感じで」

(直球ね)

 と、クオンの肩でふわふわ浮かぶソネーユが目を細めた。


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