霊媒師

 その頃、ある占い師が駅の入り口付近の小さな建物で、今日の仕事の準備をしていた。今日の依頼者の一番初めは、黒髪にモデル体型、オリエラにそっくりの人物だが、名前をソフィアとなのった。その人はなんどもここにかよっていて、だんだんと親しくなっていった。時々鋭いこともいうが、この占い師は気が優しくそういったものになれていた。それにソフィアという人は、なんだか心に苦しいものを抱えていて隠している感じがあったので助けてあげようと思っていたのだ。朝食を終え、仕事の用意をおえ、化粧を整える。中年の小太りの占い師で、やさしい笑みをうかべ、ペットの小鳥に餌を与えると、仕事部屋を綺麗にし、来客がくるのをまった。そうしているとしばらくして、コンコンと扉がノックされた。

「はい?」

 客か、用事のある人か、どちらもここで対応している。だが相手は何もいわずに、ドアをあけた。

「あら?ソフィアさん」

 間違いない。その容姿はソフィアさんそのもので、美しい顔立ちと体を独特の歩き方でゆらゆら、ゆらして部屋にはいってくる。ひとつだけ奇妙だったのは、その顔にはいつもの快活な笑顔がなく、そのしぐさもどこかぎこちなさを感じたのと、その人全体が黒い影に包まれているような感じがしたところだった。

「ぐぐ、ググ、ゲエ、ゴゴ」

「はい?ソフィアさん、大丈夫ですか?」

「え、エエ、エエ……ソウネ」

 占い師は、奇妙な客にもかかわらず、普通に取り繕うとした。なぜならよくいるのだ。霊媒師や占い師に対して、自分も力があることをしめそうとして奇妙な行動をとる客が、何のためかはわからないが、たいていはある程度聞き流し、様子をみてあしらうだけで本人の気はすむ。こちらは占い意外の仕事はしていないので、それ以外の問題、精神面だとか、気分だとかはほとんど無関係といったていでさっさと仕事をするに限る。だがこの時のソフィアという客は、演技力というより、何か普段の様子とはかけ離れているような感じをうけた、間接の動き、喋り方、しぐさ、どれをとっても人間離れしているような感じなのだ。

「そこへ腰かけてください」

 占い師は客を、席に座るようにうながす、背の低い小さな椅子と小さな机。こじんまりとした空間で、占いをするのが趣味だった。

「ソフィアさん、今日は何の占いをしますか?いつものように……」

「ソンなことドウデモいいの!」

 突然ソフィアが机をたたき、どなった。

「どうしたんですか?」

と、問うと、ソフィアは答えた。

「私の友達ニツイテ調べなさい!外れたらショウチシナイワ」

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