少女
二人はいつしかブランコにすわって話をしていた。クオンが、悲しげにオリエラに目線をおくる。オリエラはそれをひきとって、おりまげた脚の上、右腕のひじを左腕でつかんで、右腕をのばし、のびをしながら少し思い出すことを嫌がるように眉間にしわをよせる。
「私の友人は悪くないわ、だって“何があっても儀式が終わるまで決してその場をはなれないで”といっていたのに、その少女だけが“怖いものをみた”といって儀式が終わるまで、決してその場を離れないでといったのに、儀式の途中で逃げかえってしまったのだから」
「その子は何をみたといっていたの?」
「あれは……たしかに妙なことをいっていたわね、私の背後に、恐ろしい化け物をみたとか……」
「あなたの背後?……」
クオンはオリエラを凝視する、しかし奇妙なものはみえない。ソネーユに尋ねてみる。
「んー何もみえないわ、まあ“眠っている”可能性もなくはないわね、封印とか……」
「とにかくそれで、彼女の評判はがた落ちになっていった、なんていってもその逃げた女の子というのが実家がとても由緒正しい家でお金持ちで、人気もあった、だからそれまでもてはやされていた友人は、一気にペテンなんて呼ばれるようになったわ」
「うーん、ひどいですね、たしかに霊感のある子が嫌な目にあるのはよくあることですが」
「うん、それから彼女は能力を隠して、自分から霊感は嘘だというようになったの、でも、それでもはじまったいじめに近いものはとまることはなく、運悪くその頃まだブームが続いていて、テレビである霊能力者がはやっていたの」
「テレビは昔から禁止されていてわからないですが……」
オリエラはそんなクオンに打って変わって優しく説明する。
「あの頃の影響力はすごかった、オカルトブームの火付け役でもあったから、でもその人が、オカルト番組で、生放送中にネタ晴らししたの、テレビの霊能力者はほとんど嘘で自分もそうだって、今までも悪霊を払えてない事が多々あり、これ以上うそをつけないって」
「そんなことがあったんですね……」
「それが、学校にも波及したわ、いっきにオカルトブームがおわって、それでみんな冷ややかな目でそういうものを見るようになった、成長する過程でそういうものと決別する時期だったのかもね、やがて彼女は不登校気味になり、私もずいぶんはげましにいったけれど、やがて転校してしまったの」
クオンは、周囲をみわたす。たしかに、二人の少女の気配がするのだ。温かいような、そして、徐々につめたくなっていくような。
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