第5話
「さて、それじゃそろそろあそこにいくか」
「あそこって?」
「今日は火曜日よ、ソネーユ」
「ああ、あのいんちき婆さんのところか……」
「こーら」
「はあ、いくら唯一なかのいいひととはいえ、気を付けた方がいいよ、あの婆さん、いい噂なんて聞かないんだから、能力だって微妙だし」
クオンがいっているお婆さんというのは、“クリエ”お婆さんだ。このクオンの店のある雑居ビルのオーナーであり、ここら一体のこうした霊的な、オカルト的な商売の取り締まりをしている。といっても、犯罪をしていないかとか、問題はないかとか、よく相談にのっているので、人々から好意的にみられている部分も多い。だが反面、恨む人も多い。何せ彼女に気に入られなければこの地域“グレッソ”で生きていくことは難しいからだ。
「クリエさーん」
一階の総合事務所に向かう。クリエさんは茶を前にして、椅子にすわり、コクリコクリと舟をこいでいる。
「あらあ、寝ている」
「ねえ、クオン、相談する人変えた方がいいよ、この人に何言ったって……」
「うーん、でも、なんでも知っているし解決作もおしえてくれるよ」
「でもなあ、この人、見えているのか見えてないのかわからないし」
「ううん……クオンまた独り言かい?」
クオンが、ソネーユを会話をしていると、頭を起こしながら、目をこすりそうして顏をあげたクリエさん。
「!!」
「何かみえた」
「え?」
「あんた、本当に妖精を飼っているのか?なんかあんたの肩に一瞬みえたけど」
そういってまためをこすり目を開けると、クリエはそのカエルのような顏をゆがませ、パーマのかかった髪の毛をゆらし、目を点にさせた。
「あら、見えない、気のせいか」
「……」
ソネーユは、口にはしなかったが、この人のこういう所が信用できないのだというように苦笑いで顔をゆがめた。
「クオン、どうだいあんた、うまくやってるかい」
ケロリと表情をかえたクリエに、今度はクオンが困った表情をする。
「いまのはいいんですか?」
「ああ、見えたり見えなかったりするものさ、わたしゃ、それより人間性でその人の霊力をみるからねえ、それよりあんた、週一の相談にきたんだろう?あんたの能力は本物だし、人あたりもいいがちょっと運がないだけ、わたしゃよくしっているよ、まあ、その力一本で稼げるようになればいいが、それで、どうだい?今日の相談は、今週はどんな客がきた?あんたを困らせているやつはいないかね」
「ええ、まあ」
少し恥ずかしそうに、クオンは両手を腹部の前で交差させた。
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