第2話

 クオンはすぐに手相占いを始める。しわをおって、ときになぞって、何かをうなずいたり、独り言をつぶやいたりする。

「順風満帆な人生……けれど何か過去に深い傷をもっていて、それが気になっている、そのせいで隠し事が多い、ミステリアスな女性」

「……もういいわ」

「え?あれれ?」

「お代はいくら?」

「500円です」

「まあまあリーズナブルね」

 そういってそそくさと会計をすませたお客さん。一瞬ふりかえりそのまま帰るのかとおもったので声をかけた。実際はただ靴を直しただけだったようだったが。

「ご依頼はどうされます?」

「“妖精鑑定”ね、依頼するわよ、尺に障るけど事実は事実、あなたは力があるようだし」

「ではまた後日、あ、お名前は?」

「私の名前はオリエラ、それは鑑定できなかったのね、また、依頼に関するものをもってくるから、その時鑑定をお願いね、じゃあ」

 そういうとそそくさと入口のカーテンをくぐり依頼者はでていってしまった。あとには、渦まきだらけの絵画やら、装飾品やら、テーブルクロスやらがしきつめられた奇妙な一室とクオンだけが残った。

「私、また何かまずいことしちゃったかしら?」

 一人ごとのように真正面をむいてつぶやく。するとその彼女の後頭部から一人の女性の妖精がでてきた。


「ちょっと、クオン!」

「は、はい」

「あなたもう少しオブラートにつつんだものいいしなさいよ」

妖精は、セミロングの金髪に、真っ黒で大きな黒目。ワンピースをきている。その羽は半透明で、虹色にかがやいていた。

「ソネーユ、ごめんなさい、やっぱり私まだ人の気持ちとかわからなくて」

「クオン、それはしょうがないわ、アンタ、それより距離感のほうが大事なのよ」

「距離感?」

「初対面のときはつめすぎず、本当の事をビシバシいったら、普通は驚くのよ

、あの依頼者だって急に態度をかえたでしょう、でもあんたの“能力”を信頼していなかったわけではないわ、ただ、あたりすぎてびっくりしたのよ、それにあまり深い内面のことをさぐられると、そこに地雷があることもある」

「地雷?」

「触れてはいけない心のトラウマやら、何やらよ、あんた、これからも気をつけなさいよね!いきなり核心に触れてもいい事なんてないんだから、まずはあなたの“能力”で外堀をうめて、少しずつ真実を導きだすの、そして信頼関係ができたところで、やっと“鑑定”できるのよ、あなたの“能力”は特殊なんだから」

 クオンは落ち込んで少し目線をさげた。

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