妖精プラグ
ボウガ
第1話
あるところに妖精の姿を見る少女がいた。そればかりかこの世のあらゆるものの感情、というより、人の連想する思考が見える。だがそれを口にしてひどいめにあったのは、彼女の心に傷をつけた。けれど少女はあきらめなかった。なぜなら、彼女と妖精との思いではとてもいいものであったから。
“伝わらないのなら、しのごのいわずに、理解させてしまえばいい”
それからでも、人に理解されるのは遅くない。
彼女は、人との付き合い方もコミュニケーションもよくしらない。なぜなら彼女は、昔から孤独だったから。重い病によって学校にもいけず、家で生活し、学び、成長した。そして両親は、早くに死んでしまった。彼女は故に、いまだ孤独であり、しかし、彼女の類まれなる才能によって、孤独でありながら、生活し、稼ぐ術をもっていた。これはそんな奇妙な一人の少女のものがたり。
「こんにちは」
占い屋、“クオンの占い”に人が訪ねてきた。二日ぶりの客に、顏をあげるクオン。
昨日のケーキ屋のアルバイトで少しつかれていたが、久々の客らしいのでにっこりと、笑顔をつくった。
(無表情な人ね)
と来客はおもった。そうなのだ。クオンは人によく接しようとしても、うまくコミュニケーションがとれないのだ。
「私はこういうの信じてないんだけど、あなたにお願いごとがあってきたの」
「ええ、ここに来る人でも、そういう人は多いわ、なんでもかまわないわよ、あなたが、私に依頼をくれるなら」
「それじゃあ……死者のことについて知ることはできる?その……あなたの力を利用して」
そういわれてクオンは、そのやわらかなふんわりとしたボブの髪型と、モノの奥そこまで見つめて居そうな目、小さくも美しくあつい唇、子犬のようなたれ目とそれにっそった二重、お姫様のようなまつ毛をゆがませて不器用ながら、笑った。
「まずは、その方に関するものを何か貸していただければ、妖精の力によって鑑定いたしますが、それから徐々に私を信用していただければ大丈夫です、もし途中で満足されたり、信用をなくされ、中止したい場合でも、受け付けます」
「……結構日をまたいだ調査になるのね」
「どうされました?」
「それだけあれば、普通に調査することも可能だなって、まあ、別にいいんだけど」
「はあ……」
「あ、それより、ここって手相もやってたわよね」
「ええ、やってますよ」
「じゃあ、ちょっと占ってもらおうかな」
そういって、依頼者は、まったくくったくのない笑顔で笑う。モデル体型で、高い鼻に、うつろ気な瞳、太い下唇、黒髪、万人うけしそうなやわらかい顔の輪郭。
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