第7話 兵糧部隊
巴少将が建物の扉を開くと中にいた隊員たちが一斉にこちらを見た。そして巴少将の顔を見ると女性隊員たちの黄色い歓声が建物の中に響いた。
巴少将の顔立ちは中性的でどちらかと言うとイケメンと呼ぶに相応しい顔立ちだ。それに加えて高身長で強靭的な肉体を持つ彼女はそこら辺の男では太刀打ち出来ない程のイケメンなのだ。
「カリーナ少佐、仕事の方は順調か?」
「――っ!!順調であります!!!」
カリーナ少佐と呼ばれた女性は、いち部隊の隊長である自分の名前をいくつもの部隊を纏める師団長である巴少将に覚えて貰っていることに歓喜しつつ敬礼して返事をした。
自分直轄の部下以外の名前も覚えているところも彼女が好かれている理由なのだろう。
「では兵糧部隊の隊員を集めてくれ。新人の紹介をしたい」
「……了解であります!!!」
カリーナ少佐がこちらに一瞬目をやってから建物の奥へと消えていった。この場にいる女性隊員たちは皆こちらを注視していた。こちらと言ってもその視線は僕のことなど居ないものとして扱うかのごとく巴少将に集中していた。
そんな視線を気にしていない巴少将は小さくはない胸を強調するような形で腕を組みカリーナ少佐の帰りを待った。巴少将のイケメンな部分に熱い視線を向けているからか、強調された胸に視線は行かなかった。
「兵糧部隊6人全員揃いました!!」
カリーナ少佐によって揃えられた兵糧部隊は6人中5人が女性で、もう1人は中性的な顔立ちにほっそりとした肉体なので、性別の判断をすることは難しい。
そう、見た目だけで言えば全員が女性なのだ。だから何故そんな部隊に僕は配属になったのだろうという疑問が頭の中に浮かんだが、ノビアさんが決めたにしろ、巴少将が決めたにしろ何か考えがあったのだろう。
「よし、じゃあ紹介するな。こいつはノビア中将が単騎で従属を行っていた最後の村出身のユーマだ。ちなみに【変態】を持っているから最低限の実力は保証しよう」
「質問ですが、なぜ我々のところなのでしょうか?第4軍団の兵糧部隊に配属するのなら男女比が丁度いい第2師団でも良かったのでは無いですか?」
「その通りだな。だがこいつは何か持っていそうだったからあたしが首輪を付けておきたかったんだ」
「首輪って……」
「なんだ?物理的に首輪をつけて欲しいのか?別にあたしにその癖はないが、別に付けて欲しいなら付けてやってもいいぞ」
「いえ、止めておきます」
「そうか残念だ」
僕らのやり取りを羨ましげに見ている隊員が一人居るのだが、同僚にそっちの癖を持つ者が居るのか……他の人たちも個性が濃そうで、これから大変そうだな。
「これから仕事があるから頼んだぞカリーナ少佐」
「はっ!!」
そう言って巴少将はこの建物を後にした。
巴少将が見えなくなるまでカリーナ少佐は敬礼を続けていた。それに合わせて他の隊員たちも敬礼をしていた。
「では仕事内容の説明と行きたかったが……この口調はもういいか。じゃあ私は今日中にやらなきゃいけない仕事が残っているからラトナに任せるよ」
「分かりました」
素の話し方に戻ったカリーナ少佐は中性的な隊員に任せた。ラトナと呼ばれた隊員は最近になって軍に入隊した新兵らしい。ちなみに階級は僕の二つ上である二等軍曹だ。
ラトナ二等軍曹は僕の元に寄ってくると服の袖を掴んで彼女の口元まで耳が引き寄せられた。
「ごめん大きい声が出ないからこうやって話すね。じゃあ仕事について教えるから私に着いてきて」
耳元でコショコショと話されてるため背中がゾワゾワとした。でも可愛らしい声だったので嫌な気持ちは全然しなかった。
彼女の後を着いて行って着いた場所は、大量の資料が積み重ねられている事務室的な場所だった。そして僕の耳元に口を寄せると
「僕たちの仕事は在庫の確認をして紙に書き留めるのが主な仕事だよ」
「へぇー、でも第4軍団は遠征が多いから外に出る任務が多いって聞いたんですが」
「その通りだけど遠征に行ったらその分紙に書くことが出来るから量は紙に書く仕事の方が多いと思うよ」
「そうなんですね」
「ヒャッ」
可愛らしいラトナ二等軍曹を見て意地悪したくなったので、最後だけ耳元で話した。自分は人の耳元で話しているくせに自分の耳が弱かったらしい。彼女のあげた悲鳴は話し声の数倍の大きさだった。
「酷いです」
彼女はまた耳元に口を寄せて言った。彼女の可愛らしさは虐めたくなるような可愛さだった。だがこれ以上やったらカリーナ少佐に怒られそうなので止めておこう。
「じゃあ私が最初にやってみせるから分からないところがあったら聞いてね」
そう言ってラトナ二等軍曹は机に向かった。そして彼女が持ってきた資料は元の在庫表と前回の遠征時の出費表だっだ。この二つを使って足りない物を紙に書き記すのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます