第25話 見慣れた魔獣



 ダンジョンに潜って5分くらいで魔獣に遭遇した。


「接敵。数1。前方10」


 アリ型のキラーアントだ。


 こいつは完全に頭を潰さないと死なない少し厄介な魔獣だったよな。


「キラーアントの弱点は頭だ」


 よく知っている魔獣だったから、つい大声を出してしまった。


―――パン―――パン。


 銃声が響き渡ると、キラーアントは魔石を残して消える。


 銃があると魔法より便利だよなぁ。


「知っている魔獣でしたか?」


「あぁ。昔よく出くわした。数が多いと厄介な相手だった」


「この先も知っている魔獣が居たら教えてください」


「了解した」


 その後は魔獣と遭遇することもなく、地下2階へと続く階段に辿り着いた。


 岩沼さんたちは意見交換をしていたが、潜って30分くらいだったから、下へ進むことに決まったようだ。


 いくらダンジョンの地下1階とはいえ、魔獣が少なすぎるように思えた。



 地下2階では、正確な距離を測りながらマッピングするから進行速度が極端に落ちる。


 金属が持ち込めなくても、銃や測定器なんかを代用品で作ってしまう科学の力はすごい。


 地下2階では魔獣との遭遇率が上がった。


 銃声が響いて魔獣が集まって来ているのかもしれない。


 確認できた魔獣は、クモ型、ネズミ型、コウモリ型で、どれも見覚えのあるものばかりだった。


 これだけで判断することはできないが、ここは俺が来ていた異世界の確率は高そうだな。


 潜って90分くらいで、地下2階のマッピングが完了した。


 今日はこれで切り上げることになり、回れ右して最短ルートで出口を目指す。


 帰りは魔獣と遭遇することもなく、すんなり魔力渦まで戻った。




     ◆




 翌日、島松先生も同席してダンジョン内で撮影された写真を見ながら、聞き取り調査が始まった。


 魔獣の名称や特徴、俺の知る限りの情報を話す。


 あの異世界は俺が行っていた可能性が非常に高いと言われ、昨日出会わなかった魔獣についても俺の知識を吐き出した。


 他の異世界魔獣の写真で似ているものを見つけて、どう違うかの説明から始まり、記憶を辿って惜しみなく情報提供をする。



「ご協力に感謝します。ありがとうございました」


 聞き取り調査が終わり病室へ戻る。


 あそこが俺の居た異世界だとしても、昨日の情報だけでは場所の特定はできない。


 2年以上も旅をしていたが、あの異世界は広大だ。


 確かに、文明人との出会いでもなければ、ロクに情報も集まらないだろうな。


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