第01話 帰還



――――ピッ、ピッ、ピッ、ピッ。


 規則正しい電子音で意識が戻った。


 頭痛が治まっているから、頭はスッキリしている。


 目を開けて周りを見ようとしたが、頭が固定されているのか、まったく動かせない。


 仕方がないから、目玉だけを動かして周りを観察してみる。


 あの異世界にはない、たくさんの機械が目に入ってくる。


 元の世界に戻ったと……、思っていいのか?


――――シュッ。


 音がした方に目を向けるが、離れているのかなにも見えない。


「おはようございます。気分はどうですか?」


 真っ白な宇宙服を着た誰かが、俺を覗き込んで話しかけてきた。


「サイアクだ」


「今日は脳波の乱れはないようで、良かったです」


「なぁ、ここは病院なのか?」


「そうです。国連日本支部の付属病院です。

 私はあなたの担当医の人吉ひとよしです」


「身体を動かせないんだが?」


「安全が確認されるまで我慢してください。暴れなければ早めに拘束を解くこともできます」


「ちゃんと説明してくれたら、むやみに暴れないが?」


 この医者が着ているのは宇宙服じゃなくて、防護服なのか?


 オレが異世界の病気を持っていたら困るから?


 回復魔法で治してるんだ。


 そんなモノは根こそぎ治療済みだぞ?


「いまの状態を説明します。

 あなたは3日間昏睡状態でした。

 昨日意識が戻りましたが、混乱していたため眠ってもらいました。ここまではいいですか?」


「了解だ」


 魔法も使えない状況で無意味に反抗しても、事態は進展しないだろう。


 今は従うしかないか……。


「名前と生年月日から身元の確認をしています」


「そんなことで嘘は言わない」


「規則ですので了承してください。

 あなたは3日前に救助されましたが、どうして自分が倒れていたのか覚えていますか?」


 自分がどうやって戻って来たか?


 確か……、王都に戻ったんだよな?


 それから何があった?


 さっぱり思い出せない。


 記憶が飛んでる?


「それは……、記憶が曖昧で思い出せない」


「そうですか。倒れる前はドコに居たのか覚えていますか?」


「たぶん。こことは違う異世界に居た」


「そうですか。その世界にどれくらいの期間居たのかわかりますか?」


 あっちへ行ってから、確か季節が3回巡ったよな?


「カレンダーがなかったから正確じゃないが、……たぶん3年くらいのはずだ」


 日数は数日数えたところで、バカらしくなって止めた。


 あっちの1年は365日じゃないだろうが、体感ではそんなに違いはないよな?


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