Denki Bran Part 3
『それって…間違っていないってこと?』
「間違いも何も、間違った見方をしたのは俺の方だって事だ」
『綾香に出来ない事がしたいんだろ?綾香はあまり酒が得意じゃないみたいだからな…』
「まあな。酒の肴は「刹那」でも作れるが、梅干しと玉ねぎが大っ嫌いな「刹那」だからな…絶対にこの2つは使わないのさ。後、牡蠣。これは俺も体質には合わない」
『牡蠣の話は聞いてるよ。だから、家では凛音には牡蠣を出さない決まりになってるんだ』
「そう言った顧客情報が徹底しているのはさすがだな…」
そう言うと、龍影は電気ブランの入ったグラスを傾けて、飲み込んでいく。
周りには何もない砂漠、そしてその空に浮かぶのは太陽と月。
しかし場面は急に変わる。
白い服のSepiaの人と白い服のMonochromeな人が、お互いにchessを楽しんでいる。
Sepiaの人が白い駒を、Monochromeな人が黒い駒を操っている。
問題はその駒を操る2人とも同じ顔をしており、それが両方とも龍影なのだ…
拮抗した盤面の中、Monochromeな龍影がKnightの駒で「Check Mate」を宣言する。
その表情は「俺がこれからの総てを手に入れる」と言う意志表示だった。
セピア色の龍影は、涙を流しながらその場に崩れ落ち、息絶える…
それを冷酷に見つめるMonochromeの龍影。
そこで映像はサンドストームによってかき消された…
この光景を目にした来人は、言葉を失った。
『あの、龍影さん、貴方は一体…』
「俺がどうしたって?」
『あんな「色彩」初めてです。何故砂漠に太陽と月、そしてMonochromeとSepiaの貴方がいるのですか?』
「なんでだろうな。俺にも解らないさ」
『龍影、お前、自分で自分を殺してるな?しかも綾香のために…』
「そんな過去もあったな。もう忘れたさ」
来夢はカマンベールチーズとスモークチーズを皿に載せて、龍影の前に置く。
『お前の色彩から見えたのは、性格も思考も違う「龍影」だった…
この皿のカマンベールチーズとスモークチーズの様に…両方とも同じチーズだが
主張が全く異なる。ここにいるのはどっちだ?』
「お前等…俺の何を見た?俺の深層心理の奥底でも見たか?
なら話は早い……Chessに買ったのは俺だ。だから俺は負けた自分を殺した。
いや、殺したというよりは取り込んだって言った方が正しいな」
『それって…人格の統合って事?』
「そう考えてもいいと思うが、精神学的には違うと思う。ただ判っている事はだ、
Sepiaの俺は必要がないという事だ」
『綾香の「楯」はMonochromeの龍影じゃないとだめってことか…』
「いくらでも好きに解釈しろよ。まあ、チーズに例えるなら、
俺はカマンベールよりもブルーチーズだけどな…」
そう言うと、龍影は不敵な笑みを浮かべてカマンベールチーズを食べる。
『で、これからどうするつもりだ?綾香に危険が迫ったら、また出てくるのか?
それとも綾香に取って変わるつもりか?』
「取って変わる?そんな事はする気はないな。強いて言えば「刹那」のキャパが限界になったら俺が出て来て「刹那」を奥に閉じ込めて眠らせる。ほとぼりが冷めるまで…な」
『でもそんな事、凛音は望んでないでしょ?』
「今までもそうやって生きてきたんだ。大丈夫だろうよ」
『お前が「招かれざる客」じゃなくて安心した』
「「招かれざる客」?俺が…?』
『ちょっと!来夢、何言ってるの?』
『「招かれざる客」がこの「Pousse-Cafe」に来た場合、
俺は管理者権限でお前を叩き出すつもりだった。
でも、お前はどうやら綾香には必要不可欠な存在らしいからな…』
「それは褒め言葉としてとらえて良いのか?」
『そこは任せるさ。但し、お前が来る時は、前もって何か合図を出せ。
そうしないとこっちは誰がここに来たのかわからない』
『来夢…勝手に決めないでよ。凛音は鍵を持ってるんだよ?凛音の鍵を使えば来れるじゃないか』
『それは無理だ。あの鍵は綾香専用だからな。龍影には何も出来ないんだよ』
「じゃあ、俺が来る時はどうしたらいいんだ?来夢…」
龍影の言葉に、来夢は金の鍵をカウンターの上においた。
龍が彫られた鍵…裏には「R」と言う文字が入っている。
『それでここに来い。綾香とは違う鍵だ。但し、綾香にはその鍵、見つからないようにしろよ』
「そう言う事か…分かった」
龍影は鍵を受け取ると、キーホルダーに通した。
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