第666話 2025705――1618


 アメリカ合衆国は混乱を極め続けている最中――

 共和党と民主党の主導権争いは、とうとう内戦、そして独立戦争へと発展してしまった。

 通貨は無力化してしまい、ニューヨーク州は独立国家を宣言する。

 これを阻止しようとワシントンDCは軍隊を動かす。


 ニューヨークはこれに対峙するべく、イギリスと同盟を組む。

 擁護するのはイギリス軍であった。

 本来のアメリカ軍はワシントンDC側についた。

 ヨーロッパの通貨は崩壊……バベルの塔のように人々はまたバラバラの通貨を使用することになった。


 ニューヨークは独自の通貨を発行し、それをイギリスは承認した。

 ロシアの脅威は続いていて、同じく中国もそうだった。

 イギリスは国際秩序の観点から、ロシアと中国を挟み撃ちにするために日本と新しい軍事同盟を締結。


 イギリスとニューヨークと日本は、先のヨーロッパのように統一的な通貨に合意――


 つまり世界の基軸通貨は3種類存在することになる。

 世界を覆うこの新基軸通貨は、デザインは違うけれど価値は同じであろう。

 すべては新国王の即位を始め、すべては西暦2024年に完成するだろう……。



 逆に、アメリカのドル神話は崩壊して、要するにその新三国同盟へと引き継がれるというストーリーである。



 これは、イルミナティによる計画的国家崩壊と同時に計画的基軸通貨崩壊という逃げである。

 やがて、ワシントンDC側のアメリカ軍も、次第に新三国同盟に歩み寄ろうとする。

 そんな最中、



 西暦2025年7月5日の日



 アメリカは独立記念日の日に、史上最大の大地震大津波が発生する。

 時刻は午前4時18分 震源地は遥か沖縄、鹿児島、高知沖の太平洋である。


 日本だけではなく、台湾とフィリピンが大津波に襲われる。

 いわゆる「南海トラフ」という大災害が、この日に起こるだろう。

 東日本大震災以降、主に高知県が今まで無傷な理由がこれである。


 台湾が壊滅状態に陥ってしまう。

 大津波は台湾の太平洋沿岸地域の都市だけでなく、山を越えて台湾海峡まで到達する。

 フィリピンも北部地域が壊滅する。


 日本の場合、もっとも被害を受けてしまうのが沖縄である。

 大津波に襲われた結果、沖縄の島の都市部は水没してしまうだろう。

 鹿児島も大津波に飲み込まれてしまい、高知も都市全体を大津波に飲み込まれてしまう。

 その大津波は瀬戸内海まで到達して、大阪湾を越えて大阪市が水没。

 和歌山沿岸も被害を受け、三重、愛知、静岡までも同じように被害を受ける。


 台湾は都市機能が再建不可能なまでに崩壊してしまい、台湾軍は指揮系統が麻痺してしまう。

 沖縄の在日米軍基地も壊滅状態で、自衛隊は統制がほとんどとれなくなってしまう。




『ヨハネの黙示録 - 最後の七つの災い。神の怒りが極みに達する』


 第16章 神の怒りを地にぶちまける

 この地震は人間が地上に住んで以来、かつてなかったほどのもので、

 それほどに大きな強い地震であった。




       *




 どこからともなく、声が聞こえてくる――


「ああ、嘆かわしい666の呪いに朽ちた者達よ! 我は777を愛している。故に我は大天使である」


 その声は聖人ジャンヌ・ダルクさまだ!

 天から聞こえる威厳に満ちた怒りの声が、カオスに陥った世界に響け!

「――愛しているのだから、私は神の御前に跪き祈るのだ」

 悲劇の英雄――ジャンヌ・ダルク!

 自らの命を捨てる決意により、祖国フランスを勝利に導くきっかけを与えてくれた者!

 彼女が神に祈るのに、どうして凡愚な人々はイルミナティは膝を折らぬ!


「ああ、神よ。どうか私達人類に『本当の救い』を与えてください」

 本当の救いというのは、イルミナティがヨハネの黙示録を人工的に起こそうとしている数々の工作だ!

 まさに神への冒涜!


「私達人類なんてものは、あなた様から見れば、ちっぽけな泥人形でしかないのかもしれません」

 聖人ジャンヌ・ダルクさまは、あえて泥人形というキーワードを使用!

 これは旧約聖書の時代、ユダヤ人が他民族をゴーレムの如く蔑視していることに由来する!

 その差別は、今もなおイルミナティが引き継いでいることを、あなたは知ったほうが良い!


「その程度の私達が、宇宙に向かう価値が、私達人類に本当にあるのでしょうか?」

 新子友花が最初に預言した内容!

 イルミナティは人工知能AIを神の降臨と自我の芽生えを偽装し、AIによりすべての端末にその神を宿らせる!

 また、人間の意識をAIの回路に融合させ、永遠の意識的命を得る目的の結果!

 彼らは神人しんじんと呼ばれて、やがて地球を捨てて宇宙を旅する計画だ!


「人類の科学、歴史を、人間選別の結果の意識体という生命体を、神は、お許しくださるのでしょうか??」

 聖人ジャンヌ・ダルクさまは、悪魔に魂を売り飛ばした神人たちには宇宙という神の領域に立ち入る資格なんてないと断罪する――!


「我は英仏100年戦争を戦った英雄であるぞ!」

 この世界至る所に、聖人ジャンヌ・ダルクさまの怒りが木霊!


「愚かなイルミナティよ! それに従う仕える偽善の大衆よ! よく聞け――」

 どこまでも、どこまでも木霊する!



 我は聖人ジャンヌ・ダルクである。

 我は火刑に処されて命を奪われた犠牲の英雄。

 我は大天使、故に我は死してもう死なぬ霊体となった聖人――

 お前達に懺悔を下そうぞ!!


 本当の神は、このような愚行を許すことは決して無いを知れ!




       *




 中国は治安維持を目的に台湾へ進軍する。

 北朝鮮もこれに同調して、朝鮮半島を南下し韓国へ宣戦布告する。

 中国は、ほぼ水没した尖閣諸島を占領、続いて沖縄上陸を目指す。

 アメリカは同盟国との安全保障条約を発動して、中国と北朝鮮へ進軍する。


 その本質は、新三国同盟による新安全保障条約である――


 この動きに、ロシアが参戦する。

 日本はこのとき憲法改正直後であったが、緊急事態条項を発動してアメリカ軍に加勢することになる。

 多くの核ミサイルが飛び交う東アジアになり、中国と台湾と朝鮮半島とグアム、西日本の主要都市は被害を受ける。

 その理由は、台湾沖大震災の発生源である核爆弾の使用を隠蔽するためだ。

 汚染された太平洋は海流に運ばれて、日本列島を下から上へと縦断する。


 日本のこの大津波による犠牲者は予想よりも少ないけれど、その代わり被爆による死者が予想よりも多くなる。

 大阪は万博中の大災害であったため、世界中から水没してしまった街を嘆かれる。

 だが、致命傷にはならなかった。


 もっとも被害を受けたのは沖縄であり、次に鹿児島と高知だった。

 沖縄の水没は元には戻らないだろう。

 やがて、これを理由に在日米軍は日本と共同管理地域として沖縄を支配することになる。

 日本の第三次世界大戦のサードステップの最前線が沖縄である。




       *




 ある1人の女性がいた。

 彼女は最後の魔女と言われ理不尽な思いをしてきた。

 ずっと、彼女は死に物狂いで戦った。

 彼女は言った。

 力一杯言った。


 私は魔女じゃない。


 すると……

 ああ、そうだ。

 お前はただの人であって、魔女ではないぞ。


 と、大天使が天から優しく教えてくれた。


 ……ありがとう。


 彼女は涙を見せる。

 そして、優しく――

 優しく天を見上げる。



 空はゆっくりと流れていた……





 続く


 この物語は、ジャンヌ・ダルクのエピソードを参考にしたフィクションです。

 登場人物と団体名等は、すべて無関係です。

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