第8話 涙

俺はしばらく涙が止まらなかった。


だが……サーシャも泣いている。



抱き寄せながらも頭を優しく撫でる。だけどサーシャは違う理由で泣いていたのだ……。




そのうち、サーシャは…

激しく泣きだした。



『どうして?どうして??』





泣きながらも俺はサーシャを抱き寄せ、

『あんなヤツ忘れろよ…… 』




『忘れたくない!!好きなの!』



『じゃあ、さっきは嫌じゃなかったの??』



『ううん。あなたの事も気になるわ!』



だけど自分の気持ちが……どんどん分からなくなってきた。


と……サーシャは泣きじゃくっていた。








◇◇◇◇◇◇◇◇◇




『落ち着いたか?サーシャ。』



サーシャは……俺の腕の中にいる。

そして口を開いた。




『私が好きな人は、女性に節操がないことは良く知ってるわ。』



『!!?じゃあ何故?』




『好きになるのに理由なんて必要ある??!』



『いや……。』



でも……




『あなたの事も気になるわ。』


『私を、幸せにしてくれそうな感じがするの。』



サーシャの背中をポンポンと叩きながら、なだめていると




サーシャが俺の背中に腕を絡めてきた。




その瞳は、涙がたくさん溢れていた。


『ごめん、サーシャ。俺……』



『君を愛してるんだ。』






『でも、好きなの!あの人が』






あなたは、素敵な人だわ。だけど……。と続けた。





俺は、あんな遊び人に負けるのか??!悔しい気持ちが湧き上がる。





俺は立ち上がって、サーシャに

服をかけた。




『俺は……』




『俺との事は……』




サーシャがこちらを見つめている。







『俺との事は……どうでもいいんだな??』




『違う!!あなたの事も!』





『もういい!!』







俺は……その場からいなくなりたかった。



扉を開けると


冷たい風が吹いている。サーシャは


『行かないで!』






だけど……俺はサーシャを置いて

自宅から飛び出た。






『他に好きな奴がいるなんてな!俺はバカか?!』







『サーシャ……』


冷たい風が吹く中……俺は涙を流したながらも



クリスマスムードの街中を走り去って行くのであった。

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