第59話 幼き生き神と贄 《四条灯視点》⑪
最後にもう一度だけ、真人に会わなければ……。
けれど、この前、言う事を聞かずに外出してしまったばかりなのに、キーちゃん、ナーちゃんも、もう私に協力なんてしてくれないわよね。
どうしたらいいかしら……?
と、私が思い悩んでいたところに……。
思いがけず、その機会は向こうからやって来た。
母様と精霊達が儀式の行われる洞窟とその周辺を点検する為外出する事になったのだ。
場合によっては、その点検は何日かかかるかもしれないとの事で、私がまた長い間一人になる事を心配した母様が、連れて行くのはキーちゃんだけにして、ナーちゃんは、私に残してくれる事になった。
「飾っていた花が萎れてしまってから、次代生き神様は元気がないようですね。
私が姿を消す術をかけて差し上げましょうか?」
「その後、私が同じ花が咲いている神社の一角へお連れしましょう」
「えっ。いいの?」
母様がいない間、こっそりとキーちゃん、ナーちゃんが私に持ちかけてくれた提案は、あまりにも私に好都合で、思わず聞き返してしまった。
「「ええ。色々思い悩まれる事もあるかと思いますが、どうか元気をお出しになって下さいね」」
「キーちゃん……。ナーちゃん……」
二人の心遣いが有難く、利用する事を申し訳ないと思いつつ、何とか真人に連絡をする方法がないかと考えてしまっていた……。
✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽
母様がキーちゃんと共に点検のお仕事に行かれた後、キーちゃんは、また私に姿の見えなくなる術をかけてくれて、ナーちゃんは約束通り、白い花・野菊の咲いているあの場所まで瞬間移動で私を連れて行ってくれた。
「ほう! 綺麗な場所ですなぁ……!」
「そうね……。……!」
辺り一面、可憐な白い花が揺れている情景はやはりとても綺麗だと思ったけれど、今の私にそれをゆっくり鑑賞している心の余裕がなかった。
ちょうど今、神社の入り口に向かっている真人の気を感じた。
真人がここへ来たら、どうしよう? やっぱり、ナーちゃんに気付かれないようにこっそり真人に手紙を渡すしかないかしら?
自分の気持ちをしたためた手紙を忍ばせた着物の襟に手をかけて、ドキドキしながら考えを巡らせていると……。
「……! 次代生き神様、点検中に自分が確認しなければならぬ事案が生じたようです。生き神様に呼ばれておりますので、しばしの間、このままお待ち頂いて宜しいですか?」
「! そ、そうなの? 分かったわ。ここにいるから、ナーちゃんは、母様を助けて差し上げて来て?」
「はい。申し訳ございませぬ。すぐ戻ります故……!」
ちょうどよいタイミングで、ナーちゃんは母様に呼ばれ、姿を消し……、それと入れ替わるように一人の少年が神社に入って来た。
「今日はあの子、いるかな……?」
真人だわ……!
キョロキョロしているその少年は、私が会わなければいけないと思っていた男の子だった。
「(とにかく、手紙だけでも渡さなきゃ……!)」
鳥居をくぐり、階段を駆け上っていく真人の後ろを、姿の見えない膜に包まれた私は追いかけて行く。
「ハァッ……。やっぱ、いねーかぁ……」
一番上の階段まで上がり、周りを見回した真人は、肩を落とすと、社殿の前に近付き、「パンパン」と柏手を打って、真剣な顔つきでお参りをし始めた。
「生き神様、この前は儀式が失敗するようになんてお願いしてごめんなさい!
これからはいい子になりますから、どうかあかりにもう一度会わせて下さい!
あの子に会わせてもらえたら、もう、他の許嫁なんて出来なくていいですから!」
……!! ||||||||
「そ、そんな事願っちゃだめよーーっ!!」
フルンッ……。パチンッ!!
真人のお願い事に被せるように、私が大声で叫ぶと、私を覆っていた膜は弾けるように消え失せ……。
「……!!! あかりっ!!」
急に姿を現した私を前に、真人の顔は喜びに輝き……。
ギュムッ!
「会いたかった……!!」
「キャッ!//」
気付いたら、思い切り真人に抱きしめられてしまっていたのだった……。
*あとがき*
読んで頂きまして、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございますm(_ _)m
今後ともどうかよろしくお願いします。
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