第48話 精霊達と白き生き物のタッグ
「ええっ!? あかりが俺との子を妊娠っ……!? しかも双子ぉっっ!? 」
キーとナーの発言に、俺は目がチカチカするようなショックを受け、思い当たる事があるのに気付き、ハッと息を飲んだ。
「もしかして、あの時の……!」
菊婆が亡くなって、あかりが俺の部屋に来て慰めてくれた事があったが、儀式でもないのに、関係を持つという過ちを犯してしまったのだった。
「そうじゃ。生き神様の妊娠率はほぼ100%と言うておったじゃろうが!」
「本当じゃ! 生き神様がどんなに悩まれていたか……! 何故、気付いて差し上げられないのじゃ!」
キーとナーに代わる代わる責められ、俺はたじろぎながら言い訳を並べた。
「い、いや、あの時は儀式の間でも妊娠しなかった事もあったし、バタバタしていたし……。でも、何故あかりは何も言わなかったんだ? その事実があれば、俺の不妊も事実無根として、島民会や冬馬の要求も、突っぱねられたろうに……!」
「それはそうじゃが、生き神様はお子が双子である故、先行きが不吉に感じ公表しにくかったのであろう」
「え。双子なんて、めでたい事じゃ……、あっ。もしかして、200年前の双子の生き神の件を気にして?」
「ああ。双子の生き神様の内、弟君は若くして亡くなり、姉君は生き神になられたが、次の生き神様(姉君のお子)の就任前に悪神になられて先代の生き神様(姉君の母)に討ち取られ、それを見ていた先代の贄(双子の父)は自殺という、何とも悲惨な結末になってしまったのじゃ」
「……!!|||||||| 」
「敵方から恐ろしい予知夢を送られた事もあり、一層、破滅的な未来にお前を巻き込むのではないかと生き神様は不安を抱かれていてように思うぞ?」
「あかりっ……。だから、ここ最近様子がおかしかったのか……。島民会や上倉、冬馬達に対処する事に必死になって、分かってやれなかった……。その上、こんな目に遭わせてしまって……。ごめんな?あかりぃっ……!」
腕の中のあかりをそっと抱き寄せ、涙を落としていると……。
「う……嘘だろっ? あかりちゃんが真人の子を妊娠しているなんてっ……」
「「「!」」」
見れば、死にそうな顔の冬馬が四つん這いになっていた。
「あ、あかりちゃんは、俺の運命の相手で、最終的に、俺のものになる筈なのに、なんで、なんで、思い通りにいかないんだよぉっ! ああ〜っ!」
ガッ! ガッ!
床を拳で打ち叩きながら、涙を流している冬馬に、俺は嫌悪に眉を顰めた。
「クソ野郎っ! 身重のあかりにあんな暴力を振るっておいて、よくも運命の相手だなんて言えたもんだな! あかりはものじゃないんだから、テメーの思い通りになるわきゃねーだろがっ!! ……!!」
俺があかりを守るようにギュッと抱き締めた時、二人の童子の影が、俺の前に立った。
「「我らに任せよっ! よくも生き神様をあのような目にっ……」」
「キー! ナー!」
「!!||||||||」
怒りのオーラに満ち溢れる双子の精霊達にビビった冬馬は、慌てて周りをキョロキョロと見回した。
「た、助けてくれっ……か、上倉! 上倉はいないか? もう一度、精霊達を操ってくれ!」
「あのぅ……、冬馬様」
「ほ、保坂! お前でもいい。精霊達をどうにかしてくれ!」
視界に入った保坂さんに、冬馬はホッとしたように声をかけたが……。
「お伝えしにくいのですが、希様は、目的達成に失敗し、意識を失われています。私も、今は贄様方に協力させて頂いていますので、ご命令には従いかねるかと……。申し訳ございません」
「え」
保坂さんに現状を端的に説明され、丁寧に頭を下げられ、冬馬はその場に固まった。
「尊き存在の生き神様に手を出した罪、その身を持って思い知るがよい!」
ゴォォォーーッッ!!
「ぎゃああぁーーっっ!!あぢっ!あぢぃーっ!!」
「「!!」」
憤怒の表情のナーが手をかざすと、すごい勢いの炎が冬馬の頭を焼き、奴は涙を流して手で炎を振り払おうと躍起になっている。
「おい、奴を憎む気持ちは俺も同じだが、殺したら、話が聞けなくなるぜ?」
あかりにされた事を思い、冬馬に復讐してやりたい気持ちと、社に仕掛けてきた今までの画策を明らかにしなければと気持ちが葛藤しながら声を掛けると、精霊達は頷いた。
「「分かっておるわ」」
ナーに入れ替わるように、今度はキーが前に進み出た。
「熱いのであろう? なら、消火してやろうではないか……!」
「ぐわああぁっ!! あ゙……❆」
ブオオォ ーーッ! カキーン!!
キーが手をかざすと吹雪が襲い、冬馬は髪は焼けてチリチリ、恐怖の表情を浮かべた状態で、カチンコチンに凍り付き、奴はその場にドタッと倒れた。
双子の精霊達は倒れた冬馬に軽蔑した視線を落とし、パンパンと手を鳴らした。
「「ふん。口程にもない。」」
「「………!!!!」」
俺と保坂さんがあまりの光景に絶句していると………。
パタパタパタ……。ストッ。
どこからか、白い小さな生き物が羽を広げて飛んで来て、氷漬けの冬馬の額の上に降り立った。
「伝七郎?!」
驚いていると、伝七郎は、小さな尾をフルフルと震わせ……。
プリッ。ポトポトッ。💩
「「「「あ……」」」」
その場にいる俺達まで凍り付いている中、クソ野郎の上に不要物を排泄した伝七郎はドヤ顔で踊るように飛び回った。
「クルックー♪ クルックー♪」
「お主、やるではないか!」
「自分と恩のある生き神様の敵を取ったのじゃな?」
キーとナーは、伝七郎に親指を立て、感嘆の声を上げたのだった……。
*あとがき*
読んで頂きまして、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございます
m(_ _)m
今後ともどうかよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます