第46話 閑話 島民会幹部 VS 島民
《桐生俊也視点》
「あっ。社の警備役の野木さん達が、島民会幹部の椙原さんと甘利さんを連れ帰って来た!」
「おっ。奴ら、社に圧力をかけるのを諦めたのか?」
「でも、風切くん達がいないよ? もしかして、あの人達だけ屋敷に入って話し合っているとか?」
「クルックー!」
真人のいる社に圧力をかけようとする島民会&冬馬と戦う決意をした俺と絹、そして鳥籠に入れて連れて来た伝七郎は、屋敷から出て来た野木さん、島民会幹部の奴らを見遣って状況を話し合った。
ザワザワ……。
「おお……! 奴ら戻って来たぜ?」
「場合によっては、野木くんの指揮で、屋敷に皆で突入かと思っていたが、その必要はなさそうか?」
他の多くの島民会の人々と共に……。
✽
「しかし、社の方も、いやにあっさり冬馬くん達を迎え入れたな?」
「今まで、お高く止まっていたが、ようやく我々島民あっての社だと理解したんじゃないのか?」
「まぁ、そうか。これからは、立場を弁え、島の為役立ってもらわないとな……。生き神様が本当に生身なら、引き摺り出して、冬馬くんと島のPRをしてもらえれば、観光の宣伝になるんじゃないか? ガッハッハッ!」
「島民見守る生き神様に何て罰当たりな事を言いやがる……! おい! あんたら、あれを見ろ! 」
島民会取締役の椙原が大笑いしながら幹部の甘利とこちらに歩いて来る中、野木さんは怒りに体を震わせ、俺達の方を指差した。
「「ん?!」」
その場に、奴らは俺&伝七郎、絹、それぞれの両親を含めて島民会のメンバー100人程が集まっているのを見て、目をパチクリさせた。
昨日、俺と絹が島民会幹部の暴走を止めるよう頼み込んだところ、両親はすぐに賛同してくれ、以前から島民会のあり方に不信感を持っていた島民のグループに、働きかけてくれたのだった。
「いい気なもんだな? 椙原さんよぉ!」
「今まで、俺達の生活を守ってくれていた生き神様に対してこんな罰当たりな事を抜かす奴に島民会の取締役なんて任せておけん!」
「そうだそうだ!」
「お前らを支援している奴ばかりじゃねーぞ!」
わあああっ!!
「「ひぃっ!?」」
腕の筋肉メッキメキの俺の親父(青果店店長)とガタイのいい絹の親父さん(漁師)に凄まれ、その場にいた島民たちに怒号を上げられ、椙原と甘利は震え上がった。
「な、何だよ? 島民の中には島民会費が社に使われる事に文句を言っている奴もいただろうっ?」
「そ、そうだ。儂らは島民の為に社に働きかけていたというのに、こんな事をして、後悔する事になるぞっ?」
ビビりながら必死に喚く幹部達に親父は眉を顰めた。
「後悔する事になる? そう言えば、島民会幹部に逆らった島民達が二人突然死したが、両名共、亡くなる前に、風切総合病院を受診していたらしいなぁ……」
「た、たまたま受診したからといって、それがなんだ? 増してや我々に何の関係もないだろ?」
「そ、そうだ、そうだ!」
絹の親父も腕組みをして奴らに告げる。
「風切総合病院から、椙原さんところにかなりの額の賄賂が渡されたなんて匿名情報もあったな?あと、島民会費の一部をあんた方が着服しているという情報も……」
「と、匿名情報なんて、何の証拠にもならないだろう!」
「そ、そうだ、そうだ!」
狼狽しながらも全く悪事を認めようとしない椙原と甘利に親父と絹の親父さんは目を細める。
「そうか……、証拠は必要だよな? 賄賂については風切総合病院のある看護師さんが現場を目撃したそうだ。今、勤務中なので、後で再度証言してもらうとして……」
「「!!」」
「島民会費の不正については、今ここに証人がいる」
絹の親父の言葉と共に、メガネをかけた年配の女性がおずおずと歩み出たのを見て、二人共顔色を変えた。
「「あ、あんたは会計監査の荻野さんっ!?」」
「わ、わたしゃ、椙原さん、甘利さんに会計監査で、使途不明金に目を瞑るよう脅されましたっ……!」
「荻野さんっ! 高級寿司を振る舞ってやったのに我々を裏切ったのか!? ハッ!」」
「やっぱり着服してんじゃねーか!」
「島民の金をなんだと思ってんだ!」
思わず、口走った言葉に、二人を取り囲んでいた島民達から怒りの声が上がる。
「これ、最近の社への暴挙、不審な行動をする幹部に辞任を求める皆の署名。ここにいる島民以外に、職務を抜けられない者、小さい子どもを持つ母親、高齢者も含め、ざっと500人分ある!」
「島民会規則には、幹部の解職請求には住民の3分の1以上の署名が必要だったよなぁ?」
「「!!|||||||| そ、そんなぁ……」」
ニチャアと笑う絹と俺の親父に署名の束を見せられ、椙原と甘利はヘナヘナとその場に座り込んだ。
「ううっ……。 賄賂に関しては、父のやった事だし、私はほとんど何も知らないんだぁっ……! 突然取締役を譲られ、自分の財産と共に失踪した父の尻拭いをさせられる身にもなってくれ。着服ぐらいしたって、罰は当たらないだろう?」
「いや普通に当たるだろう! あんたが蔑ろにした生き神様によってな」
泣き出す椙原に、近くにいた野木さんが容赦なく突っ込んでいた。
「トシちゃん。これで、社は大丈夫そうだね?」
「ああ。冬馬達が屋敷の中で何を話し合おうが、島民会がこんな状態では、ご破産になりそうだし、これで真人も……」
その様子を見て、絹と俺はホッと胸を撫で下ろした時……。
ガタンッ! パタタ……!
「クックル〜!!」
「伝七郎っ?!」
「伝七郎ちゃんっ?!」
閉まっていた筈の鳥籠の扉が突然開き、伝七郎が社の屋敷の方へ向かって飛び立ってしまい、俺と絹は大声を上げたのだった。
*あとがき*
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