第43話 閑話 先代贄からの電話《上倉希視点》
「お前の目的は叶わないお前の一番大切なものは、間もなく失われる」
電話をかけて来た先代贄は、保坂を通して、私に一方的な通告をして来た。
「何だとっ!?」
「希様っ……!」
思わず、声を上げた私に保坂は諫めるように声をかけた時、奴は楽しそうに含み笑いをした。
『ああ、上倉。そこにいたのか?』
「っ……! 保坂! 貸せっ!」
「希様っ……」
臍を噛んだが後の祭りだ。保坂に携帯を借りて、情報を聞き出す事にした。
「出任せもいい加減にしろよ?
生き神も贄も既にこちらの手中にある。詰んでいるのはお前の方だ!
島に上陸も出来ず、足止めを食らっている奴に何が出来るという……」
『お前の守りたい者だが、羽坂に遅効性の毒を盛らせた。あと数時間で症状が現れ、死に至る。』
「……!!」
『私の要求は、今すぐ生き神様を解放し、キーとナーにかけた術を解除する事だ。お前達が社から撤退次第、毒の種類を教えてやる』
「……!? お前は、何をっ……!
そんな事をしたら、生き神は役目を果たなくっ……」
『ああ。そうだな? だが、それが何だ? どうせもう間もなく、この島は沈む。その前に、血を分けた身内だけでも助けたいと思って何が悪い? お前もよ〜く気持ちが分かるだろう?』
「っ……!!」
『神の力を持つ生き神様と違って、人間は生命維持に必要な部分に修復しきれないダメージを受けると死に至る。お前の大事な者が失われた瞬間、今までお前がやって来た事は無に帰す。詰んでいるのはお前の方ではないか? 上倉希……いや、葛城真!』
「!!」
『では、全てが終わったら、この番号か私の身内に連絡をくれ。ではな』
ブツッ。
先代贄は、言いたいことだけ言い終わると電話を切った。
「〰〰〰! くそっ!」
ガンッ!
「希様っ」
携帯をその場に投げつけると、保坂が心配げに駆け寄って来た。
「今のは恐らく希様の動揺を誘う作戦かと思われます。不用意に彼の要求を飲むべきではないかと……!」
「保坂! 彼の事はお前に一任しておいた筈だな? 体調に変化はなかったか?」
「そ、それがっ……。昨日の夜、下痢をしてらしたようです。ですが、今は回復されてっ……」
保坂が気まずそうに報告してくるのに、私は舌打ちした。
「様子を見に行って来る!」
「の、希様っ! お待ち下さいっ!」
保坂が止めたが、私は焦る気持ちを抑え切れず屋敷を飛び出した。
先代贄の言う事は恐らくハッタリだ。生き神以外を全て切り捨てる覚悟があるなら、私の正体が分かった時点で彼を消している筈。
詰んだ状況で、保坂の言う通り、私の動揺を誘う為の最後の悪あがきに過ぎない。
彼の無事を確認出来れば、奴の嘘は証明され、私達の勝ちは確定だ。
「ハァッ。ハァッ。そうだ。落ち着け……」
自分を言い聞かせながら、彼を運んだ納屋の戸口まで走り寄ると……。
「ギャーーーッッ!!!!」
「!??」
納屋の中から断末魔のような悲鳴が響き渡り、私はその場に凍りついたのだった……。
*あとがき*
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