第40話 第二の贄 襲来 《四条灯視点》

 ドサッ!


「うっ……。こ、ここは……?」


 キーちゃんに瞬間移動でどこかへ連れて来られ、固い床に乱暴に下ろされ、私が周りを見渡すと……。


 薄暗く狭い部屋の上方に赤く輝く石が祀られているのを見つけ、私は目を見開いた。


「始祖様の御石?! う、ううっ……」


 御石から発せられる霊力の影響を受けて立ち眩みが起こり、その場に座り込んでいると……。


「大丈夫かい? ここは継嗣の儀が執り行えるよう、屋敷内に新たに設えてもらった部屋なんだ」

「……!||||||||」


 振り向くと、いつの間にか、背後にナーちゃんに連れられた風切冬馬が立っていて笑みを浮かべていた。


「「道を踏み外した生き神様を正しき道に戻して差し上げるのが我らの役目……。さぁさ、正しき贄と継嗣の儀のやり直しをなさいませ……!」」


 双子の精霊達は風切冬馬の傍らでニィッと笑う。


「キーちゃん……!ナーちゃん……!」


 機械的な動きに無感情な話し方。


 彼らの様子はやはりおかしい。確かに私は、非難されてもおかしくない罪を犯してしまったけれど、本来の彼らなら、今の私に新たに継嗣の儀をする必要がない事ぐらい分かっている筈。


 誰かに操られているとしか……。


 そう思った瞬間、最初の儀式で真人がキーちゃん、ナーちゃんを封じたお札、話し合いの場でキーちゃん、ナーちゃんの力を無効化した上倉さんの力を思い出した。


「キーちゃん、ナーちゃん、二人共、目を覚まして!」


 精霊達に必死に訴えかける私を見て、風切冬馬は愉快そうに高笑いした。


「ハハッ。無駄だよ! 精霊達は今、上倉の支配下にある。

 君を汚した忌々しい贄もここには来れない。」


「!!|||||||| 真人に何をしたのっ!?」


 菊婆と、あの鳩に起こった事、夢の中の瀕死の真人が頭を過ぎり、金切り声を上げる私に、風切冬馬は顔を歪め吐き捨てるように言った。


「あの種無しには、元許嫁の女を宛てがってやったよ。女なら誰でもいい猿野郎さ、今頃は獣のようにまぐわっているだろうよ」


「っ……!!||||||||」


 それを聞いて、一緒に島から逃げようと持ちかけていたという香月茜さんが真人と一緒にいるところを想像してしまい、私の胸は強く痛んだ。


「だから、僕達を阻むものは何もないから、安心して? もう、あんなカースト底辺のクソ野郎の事は忘れて、二人で愛し合おう……!」


「こ、来ないで……!」


 近付いてくる風切冬馬に逃れようも、始祖様の霊力の影響から未だ体調が戻らず思うように動けない。


 私はズリズリと這いながら、壁際まで追い詰められると……、彼は悲しげな表情になった。


「どうして、逃げるんだい? また会おうと約束したろう? 僕と君は結ばれる運命にあるというのに……」

「っ……!」


『大きくなったら、ぜったい君をお嫁さんにするからな〜!』


 夢の中の男の子を思い出し、一瞬怯んだ隙に……。


「嫌だと言っても、もう絶対離さないよ!」

 ガバッ!

「きゃぁっ!! あぅっ……!」


 強引に強い力で抱きすくめられ、全身を締め上げられる苦痛に私は喘いだ。


 い、痛いっ……! 動けないっ……!真人じゃない男の人の匂い……! 気持ち悪いっ……!


「君はもう、僕のものだっ! んうっ……」

「い、いやあぁっ……! んうっ……」


 顎を掴まれ無理矢理唇を奪われ、おぞましい肉の感触に耐えながら、私の頭にあるのはただ一人明るい笑顔の少年の事だけだった……。





*あとがき*


 胸糞な展開で申し訳ありません。再来週以降は希望が見えてくる展開になってきますので、よければ引き続き見守って下さると有難いです。

 今後ともどうかよろしくお願いします。m(_ _)m








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