第37話 羽坂の告白
決戦の準備を整えた翌日夕刻――。
予告して来た通り、島民会取締役の椙原(クソジジイではなくその息子)、幹部数名、神倉、冬馬、茜が社の屋敷に訪ねて来た。
「彼ら、やはりやって来ましたね」
「ああ。断っているのにしつこい奴らだぜ!」
防犯カメラの映像を見て、保坂さんと俺は顔を顰めた。
キーには別部屋であかりの警護、ナーには屋敷を巡回を頼む中、俺とスタッフさん達は和室に集まり、社の入り口に取付けられた防犯カメラの映像をテレビに映し出し、いざという時は動けるように待機していた。
画面に映る映像を見ると、島民会と冬馬達が、社の入り口に差し掛かった時、(菊婆の死の直前、家の警備をしていた)野木周平さんを含む数人の屈強な男達が奴らの行く手を阻むように立ちはだかった。
「おや、これは若い衆の方々。どうされたのですかな?私達は社の方と話し合いに来たのですが……」
張り付いたような笑みを浮かべ椙原(息子)に対して、野木さんは怒り気味に大音声を上げた。
「どうもこうも! 島民会の幹部の方々、風切総合病院の関係者の方々!我々はあんた方から不当な圧力をかけられていると社に協力を求められ、警護に来たまでだ!
社の意向を無視した最近の言動、目に余るものがあると思っていた。
どうか、ここは、お引き取りを!」
「おやおや、不当な圧力だなんて! 我々は島民会の現状をお伝えし、平和的に話し合う為に来ただけですのに、社の皆さんは誤解されているようですね。
大体、貴方方も会員だというのに、島民会に逆らうおつもりですか? 島で働いていけなくなってもいいんですか?」
丁寧な口調ながら圧の籠もった笑顔でそんな脅しをかけてくる椙原(息子)は、父親のジジイそっくりで反吐が出そうになったが、野木さんたち若い衆はそれに敢然と立ち向かってくれた。
「それが不当な圧力だって言ってるんだ! 島の全員がお前らに賛同していると思うなよ?」
「そうだそうだ! 島を守って下さる生き神様に罰当たりな事はできねー!」
「ああ、いざという時は有志で寄附を集めて、社の存続に貢献させてもらうぜ?」
「うおぉ! 野木さん達カッケーな! そこまで考えてくれていたとは、ありがてえ!」
「ええ。彼ら頼りになりますねっ!」
俺が興奮してガッツポーズを取ると、刈谷さんが同調してくれた。
「しかし、最近、島民会で幹部反対した人で急死した人もいますし、心配ですね。彼ら、変な事をして来ないといいのですが……」
「……!」
保坂さんに憂いを含んだ目で言われ、俺は画面で困ったような顔の椙原と近くにいる神倉、冬馬、茜が話し合っているのを確認した。
もし、神倉に人を害するような不思議な力があるとしても、多くの人目がある中でその力を発揮する事は出来ないだろう。
野木さん達にはしばらく一人にならないよう注意してもらうとして……、取り敢えずの危機が去った時にキーかナーに送ってもらった方がいいかもしれないなどと考えていると……。
「贄様、大変な時にすみませんが、少しだけいいですか?」
「?」
あかりの世話係の若いスタッフ、羽坂さんに小声で呼ばれ、外の廊下の方を指差された。
「あ、ああ……。ちょっと、皆、頼みます。何かあったら知らせて下さい」
「「「はい!」」」
俺は他のスタッフさんにその場を頼んで、羽坂さんと廊下に出た。
「えっと、羽坂さん、何かありました?」
あかりの世話係で、他のスタッフさんとは別行動をする事も多く、俺的に一番関わりが薄い彼女に呼び出され、戸惑いながら聞くと……。
「……。私、贄様に告白しなければならない事がありまして……」
「えっ。告白?!」
そんな事を言われ、俺は一瞬ドキッとした。
決戦を前に、色々覚悟した男女がカップル化するとか、少年漫画とかでありがちな展開だけど、まさか愛の告白じゃないよね?
いや、でも、俺には既に心に決めた人が……!
などと、一瞬アホな妄想をしてしまったが……。
「申し訳ありません!」
「え」
気付くと、羽坂さんは勢いよく俺の前に頭を下げていた。
あ。告白って、やらかした方か?そう言えば、羽坂さんイケメン好きだったわ。
ホッとするような少し残念なような気持ちで、羽坂さんの次の言葉を待つと……。
「っ……………。昨日、贄様が体調を崩されたのは、私のせいです。実は下剤を盛らせて頂きましたっ…。」
「?!」
彼女が躊躇った末、苦しげに吐いた言葉に俺は目を剥いたのだった……。
*あとがき*
読んで頂きまして、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございます
m(_ _)m
前話の最後のおまけ話のタイトル「双子の精霊 不穏の兆候」が抜けておりました💦
大変申し訳ありませんでしたm(_ _;)m
色々ご迷惑をおかけしますが、今後ともどうかよろしくお願いします。
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