第8話「告白」
私と消くんは仕事の取材で田舎町まで来ていた。
「今流行りの移住」というテーマで記事を書くことになった。
消くんはカメラマンとして私は記者として優子に紹介された移住をした人に話を聞きに来ている。
「良いところですねぇ。自然も豊かだし移住にはピッタリって感じですね」
「そうなんですよ。私も結婚して移住するならここだなって」
「ご主人は?」
「農家なんです。この時期は雪が降って大変なんです。お二人は寒くないんですか?」
消くんと私は顔を見合わせて「そうですね。寒いです」と声が揃った。
話を聞かせてくれている田中さんはふふっと笑っている。
「お二人はお付き合いされてるんですか?」
「え?」
どう答えているか困っていると消くんは「まだなんです。でも、僕は好きなんです」と言った。
私も思わず「私も彼に同じです」と言ってしまっていた。
「両想いなんですね」
「まぁ、そうですね」
消くんが少し照れくさそうに笑う。
それを見て私も少し照れくさくもあり安心もしている。
「それでは私たちはこれで失礼します」
「金田さん」
「はい」
「良い恋愛、してくださいね?」
「はいっ!」
心の準備が出来た。
消くんの告白を待ちたい
そう思っている。
「…綾さん」
「ん?どうしたの?」
「…僕、このまま帰りたくない」
「え?何言ってるの?」
私は戸惑った。
一応、私には夫が居る。
消くんは未成年者。
ヘタをすれば誘拐になる。
それはゆるぎない事実だ。
「僕、分かったんだ。綾さんが好きだって」
「それは恋愛対象として?」
「うん、そうだよ」
「それで?」
「僕と付き合ってください」
私にはもう消くんのことしか見えていなかった。
答えはもう決まっている。
「遅い。その言葉、待ってたんだよ?」
「ごめんね、やっと言えた」
「よろしく」
私の返事に消くんは今まで見たことのないような笑顔を浮かべている。
その表情が健気で守ってあげたくなる。
これが「母性本能」ってやつなのだろうか。
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