第6話「彼への接し方」

それから時は流れて消くんとはまだ「友達以上恋人未満」の関係に変化はなかった。

正直、消くんが「女の人」だと知って戸惑ったしどう接したら良いのか分からないところがあった。

そんな時だった。


「美咲ちゃん、元は男性の人だったの!?」

「実はそうなんです」


仕事で仲良くしている友達の美咲ちゃんが「私になら」と「カムアウト」をしてくれた。

理由を聞くと「綾さん、寛容になってきたから良いかなって」という事だった。

たしかに私は消くんに出会ったあの日から周りの人に「なんか優しくなった」と言われたし、彼が「カムアウト」してくれてから少し調べてみたりもした。


「綾さん、今、セクマイの子と付き合ってません?」

「私?ううん、まだ付き合うには至ってないの」

「でも好きなんですよね?」

「そう、なのかな。でも、FTMってカムアウトされた時に正直、これからどう接したらいいのか分からなくて。今もそうなんだけどね。一緒に居たら楽しいし理解したいって気持ちは強いっていうか」

「へぇ」


美咲ちゃんはニッコリと笑っている。

何かおかしかったかな?


「綾さん、その人のことが好きなんですね。じゃないとそんなこと思わないですよ。相手の子が羨ましい」

「そう?」

「だから優しく出来るんですね」

「私、優しいかな?」

「綾さん」

「ん?」

「その子のこと大切にしてあげてください。その子のこと男の子とかじゃなくて人として見てあげてください」

「う、うん。分かった」


そうなんだ。

人としてが肝心なんだ。

私は消くんのこと「男性として好き」なのかな?

それとも…「人間として好き」なのかな…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る