第4話「夫婦」

あれから消くんとは仕事を含めデートを重ねている。

あくまでも「友達以上恋人未満」の関係。


「綾、最近楽しそうだね」

「そう?」

「何か良いことあったの?」

「良いことっていうのかな?分からないけど。」


康太には消くんのことを「仕事で出会った友人」と言っている。

もしも、万が一のことを思うとなんだか申し訳ないような気はする。

ないとは思うけど。


「何?気になるんだけど。教えて?」

「ちょっとぉ!くすぐったいよぉ!!」


康太のくすぐりには敵わない。

これは付き合い始めた時から一緒。

私たちなりのスキンシップでもある。


「何があったか教えて?」

「えー?どうしよっかなー?」

「言わないとちゅーするよ?」

「じゃあ言わない」

「ちゅっ」


康太のキスは心地が良い、はずだった。

だけど、今は何故かそれをあまり感じない。

時々、消くんの顔がよぎる。

消くんとキスがしたいと望んでいる気がした。


「綾…」

「康太…」


康太が営みを誘ってくることは当たり前なことだ。

私たちは夫婦なのだから。


「綾…?」

「ごめん…。ごめんね…康太…」


涙が出てきた。

康太には申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

けれど、今すぐに消くんに会いたい。

そう思っている気持ちに変わりはない。


「大丈夫…?疲れてるんだよ。きっと。もう寝よう」

「…ちょっと風に当たってくる」


私の反応に康太は少し驚きながらも「うん、行ってらっしゃい」と言ってくれた。

私は罪作りな女だ。

康太の奥さんとして失格になりかけているのかもしれない。

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