(二)-21

 そう言いながら手慣れた手つきで顔を整えていく。

 その手つきを見て、巨勢は「在原さんには見せているんだろ」と尋ねてみた。

「まあね。彼とも長いから。あ、でも最近は見せてないかな」

 概ね完成した自らの顔を鏡でじっくり点検しながら、麻美はそう答えた。

 そして、手鏡をバッグにしまおうとしたとき、麻美はバッグを足元に落としてしまった。

 「やだ、ちょっともう」と声を上げて前屈みになりながら、麻美は足元で広げてしまったバッグとその中身を拾い上げた。そして座席の床に転がってしまった中身をバッグへ無造作に投げ込んでいった。


(続く)

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