(二)-11

「ウソよ、ウソ。そう言ったら、タケちゃん、どんな顔するかなって、ちょっとからかってみただけ」

 そう言ってふふふっと笑った。そんないたずら心のあることを言うのは、昔から同じだった。

 俺は彼女に笑い返した。しかし、冷や汗であまり上手く笑顔を作れなかった。

 そして「久々に会えて嬉しかった」といいながら、彩夏は伝票を掴んで席を立った。

 巨勢はとっさに「ここは俺が」と言って伝票を掴んだ。

「ありがとう。息子がそろそろ帰ってくるので、もう行くわね。工場用地の方は、よろしく頼むわね」

 そう言い残すと、彩夏は店を出ていった。

 巨勢は大きくため息をついた。


(続く)

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