(二)-10

「本当に、俺の子なのか」

 彩夏は「そうよ。あなたの子どもなの」と言ってまっすぐ巨勢の目を見つめてきた。

 その瞳は全く迷いがなかった。きっと本当なのだろう。彩夏とは中学の時から付き合っていたものの、肉体的な関係を持ったのは高三のクリスマスの時だった。それから何度か体を重ねたが、きっとその頃にできた子どもなのだろう。その頃は女性の体のことなど何も知らなかったし、避妊なんてしていなかった。ならばできて当然か。

 そんなことをぼんやり考えていると、「なーんて、ウソ」と彩夏の声で現実に引き戻された。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る