第七章 失意の底

031 心は何処に

「すなぎも」


 呟く。

 今日もすなぎもはこない。すなぎもはわたしのストーカーなのに、まったくわたしの前に顔を出さない。

 ストーカー失格だ。


「なんでこないの」


 ぼそりと呟く。

 わからない。わかりたくない。

 今さえよくわからない。

 自分が何でここにいるかもわからない。


 でもここからでたくない。

 なんでかわかんない。

 わたしは手の中のストラップを、くにくにと触る。

 すなぎもにもらった大切なストラップ。


「へへへ」


 絶対に離さない。

 これはとっても、うれしかったものだから。


「すなぎも、まだ来ないなぁ」


 ドアを見つめる。

 開く気配はなかった。


「すなぎもっすなぎもっ」


 テーブルをとんたったとんたった叩き、リズミカルに名前を呼ぶ。

 それでもくる気配はない。いろんな方法を試した。窓の外に大声で叫んだり、ナースコールを無駄に押してみたり。


 でも来ない。


 わたしが悪い子だから?


 わたしいっぱい人殺してきたから?


 涙が出てくる。


 かなしい。


 とまらない。


 どうして。


 ねぇ……。


 わたしは、顔を抑えた。

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