第3話 やりたいこと:能力とスキルが欲しい

【第三話】やりたいこと:能力とスキルが欲しい


「神』スキルとはご主人様が思い浮かべたイメージを具現化する万能創造スキルです。でも『神』スキルに慣れていないご主人様では『神』スキルを使用する度に明確なイメージを思い浮かべるのは難しいと思います」

「そんな時に役に立つのが『能力アビリティ化』と『スキル化』」

「そう。フォースデン世界の生物は『能力』と『スキル』というものを持っています。『能力』とは自動発動する特殊能力。そして『スキル』は任意発動する特殊能力のことです」

「『能力化』は主に耐性系やステータスアップ系が多いけど、特殊ユニークなものもたくさんある」

「それ以上に多種多様なのが『スキル』で、例えば異世界系の物語で定番の『無限収納インベントリ』や『鑑定』なんかも『スキル』ですね。『スキル』はそのスキルの持ち主が使用することで現象が発動するものです」

「なるほど。ほんとにゲームみたいなんだ」

「本来のフォースデン世界はここまでゲーム的なものではなかったんですけど、ご主人様が転移するときに創世神がチャチャッと作り替えちゃったみたいです」

「そんなことができるの!? 創世神って凄いんだな……いや神様なんだからすごいのは当然なんだろうけど」

「そうでもない」

「へっ?」

「ルーちゃんの言う通りですよ。加護を貰っておいて言うのもなんですけどあの創世神は世界を創ってはすぐに飽きて放置しちゃう、困った創世神なのです」

「ん。飽き性でうっかり屋のクズ。自分で創った世界なんだから最後まで面倒を見ろと言ってやりたい」

「そ、そうなんだ。そんな風には見えなかったけど……いや、そうでもないか」


 よくよく考えてみると俺自身、創世神のミスで死んでしまったのだ。

 それに死んだあとの軽ーい反応を見れば、ルーがクズと罵るのも何となく分かる気がする。


「ま、まぁ神様についての話はいずれまた聞かせて。今はその『能力化』と『スキル化』について説明してもらって良いか?」

「もちろんです♪ と言っても殆ど説明しちゃったのですが……」

「やることは簡単。『神』スキルで『能力』と『スキル』を創れば良いだけ」

「だけ、と言われて、分かったとは言えないけど。でも一度、やってみる」


 できないからやらないのでは前世と同じだ。

 やってみて、失敗したらなぜ失敗したのかを考えてもう一度挑戦すれば良い。


「その意気です! ではご主人様。まずは『鑑定』をスキル化しましょう!」

「分かった。やり方を教えてくれる?」

「ん」


 頷いたルーが俺の手を握り締めた。


「へっ? 手を握る必要があるんだ? あ、もしかしてルーたちの力を借りる必要があるってこと?」

「んーん。頭の中にイメージを浮かべるだけ。手を繋いだのはルーが主様と手を繋ぎたかっただけ」

「あ、そうなんだ」


 繋いだ手から伝わってくるルーの体温。

 その体温が繋いだ手から自分の体内に染み込んでくるみたいで――なぜか妙に心臓の音がうるさくなった。


「主様、集中」

「ご、ごめん」


 ルーに注意されて俺は慌てて目を閉じた。


「まずは主様の頭の中にある『鑑定』のイメージを思い浮かべる」

「鑑定のイメージ? ってどんなのだろう……」


 異世界転生系の物語の中では、例えば相手のステータス情報が見れたり、アイテムの詳細が確認できたりってところか?


「思い浮かべた?」

「うん。それなりには」

「じゃあその状態で『神』スキルを使う。サン、ハイッ」

「か、『神』スキル!」


 ルーに促されて声を発すると身体の中心――心臓の辺りに小さな熱を感じた。


「これで主様は『鑑定』スキルを手に入れた。自分に向かって『鑑定』スキルを使ってみて」

「自分に向かって……。よし、じゃあ『鑑定』」


 自分のことを知りたい――そんな事を考えながらスキルの名を口に出した瞬間、目の前に半透過ウィンドウが出現した。

 そこには自分の名前が表示されており、名前の下には自身を構成するステータスらしき数値が並んでいた。


「わっ! すごい、これが『鑑定』スキルの効果なんだ」


 驚きを覚えながら、ウィンドウに表示されている自分のステータスに目を通した。


【名前】:カミト・ジングウ

【種族】:代行者

【年齢】:二十歳

【LV】:1

【HP】:30/30

【MP】:∞

【PP】:5/10

【力】 :256

【魔】 :256

【耐】 :256

【速】 :256

【運】 :256

【能力】:神

【技能】:『神』 鑑定


「これが俺の能力値……って言っても、これって強いの?」

「どれどれ……うん、ご主人様はすごく強いステータスをお持ちですよ」

「ん。主様はこの世界で最強のステータス」

「最強なのこれで? そうなんだ……」


 数値も見ても自分が最強だなんてまるで実感が湧かないのは、この世界の基準が分からないからだろうか?


「ちなみにこの世界の基準値ってどれぐらい?」

「この世界に存在する一般的な種族の最高値は100です。例外も存在しますが概ねこの数値を基準に考えればご主人様の強さが分かると思います」

「最高が100なのっ!? えっ、つまり俺ってこの世界で最強の人よりも二.五倍強いってこと?」

「色んな設定の説明を投げ捨てて分かりやすくざっくり言うとそんな感じです♪ よっ! 世界最強のご主人様♪」

「最強かっこいい……♪」

「いや待って。今、設定って言ったよね? なんの設定?」

「それは……えへへっ♪」


 俺の質問にミカはチロッと舌を出しただけで笑って誤魔化した。

 クソッ、あざといけど可愛すぎだろ……!


「ルーたち、よく知らない。創世神のやったことだから」

「あの神様が、俺が転移してくるときに何かやったってこと……?」

「そのようです。ですがミカたちには分からない領域に、その設定情報を隠しているみたいで……」

「ルーたち、何も分からない」

「そうなんだ」


 どうやらあの軽薄そうでテキトーな創世神が、俺に対して何かをしたらしい。


(享年二十九歳とか言ってたのにステータスを見ると二十歳になってるし。そもそも種族の代行者って何? 神様は一体、俺に何をしたって言うんだろう……?)


 はっきり言って不安しかないが、創世神はすでにフォースデン世界からどこかに立ち去ってしまっている。

 神様が何をしたのか分からないけど、正直、気にしても仕方ない。

 ――と、そう思うことにした。


「それより、マジックポイントMPが無限大になってるんだけど。あとPPってのは何のことだ?」

「PPはプラーナポイントのことですね。『神』スキルを使うと1減ります。今日はミカとルーを眷属として創造したりスキル化を使ったので減ってますね」

「神精力は一時間ごとに一割回復する。あと主様のレベルが上がると最大値も上がるからレベル上げ頑張って」

「レベルなんてものもあるんだ? まんまゲームだな」

「創世神がそう設定しましたからね。ご主人様のレベル上げは特殊ですからすぐには上がらないですが・・・・・・時機が来れば詳しく説明しますね」

「了解。それにしても……最強なんて言われても自覚が湧かないなぁ」

「それはそうです。今まで平和な日本で生活していたご主人様には圧倒的に戦闘経験が足りませんから。能力的にどれだけ強くても、『能力』や『スキル』の熟練度によって戦況が覆ってしまうこともありますしね」

「つまり主様は世界最強の初心者ってこと」

「なるほど。ならこれから色々と経験を積んでいかなくちゃな」

「はい♪ ミカたちも全力でご協力しますね♪」

「ん。主様がんばる」

「ああ。とにかく『スキル』っていうのがどんなものなのか、なんとなく理解できたよ。ありがとう」

「どういたしまして♪ ではご主人様。さっそく次の『スキル』をゲットしちゃいましょう♪」

「ん。次は『無限収納インベントリ』のスキル化がオススメ。魔物の素材を保管するのに役に立つ」

「異世界系じゃ定番のスキルだな。よし、やってみる!」


 こうして俺はミカとルーの助言を得ながら様々なスキルを創りだした。

 その手順と同じように多くの能力を創出し、スキルと同じように『能力化』して自分のステータスを強化した。


//第6話まで公開中です


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