第12話
(見ているがいい。私を苦しめるものはみな苦しめてやる )
若い夫婦はまわりに勧められるままにワイングラスを手にとった。
血のように赤いワインが注がれる。
(あのワインセー口でも飲めば、やつらは死ぬ。
毒は体に残らない。ワインも数時間経てばただのワインさ。
たとえ見つかったとしても警察は私の言いなりだ。私の緻密な計算に間違いはない!)
おまえは間違いだらけだよ…と意識。
もう遅い、全てがー遅すぎた!
「うっ!」
意識すら見放した男が苦悶の声をあげた。 若い夫婦はワインをとりおとして声のする方を見た。それは突然だった。
ー彼は死の底へと引きずりこまれる。
再び暗闇の中、彼は全てを理解していた。 だが、やはりそこにいるのは頭の大きいひからびた手足を持つ子どもだった。しかもその頭は前とは比べものにならないほど大きい。
そしてその顔は少年であったり青年であったり中年であったりして 一様でない。
目の前で見ていた青白い少年はそれでも顔色ひとつ変えない。静かにうつむいて言った。
「それが本当の君なんだね。君は大人であって、子どもでもあり 大人なのにいまだに子どもなのだ。僕の考えは間違いだったのだ。」
「違う!」
頭の大きいーもう子どもなのか大人なのかわからなくなった彼は言った。
「もう考えるな、それ以上!私のように頭でっかちになりたくなければな。目で見たものをそのまま判断するな。そうだ、目を閉じてーさっきの盲目の子のように、見ることはできなくても感じることができるはずだ…。」
そう言うと頭を揺らしながら、彼は少年に近づいた。
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