第5話
「似てる−似て…。」
子どもは頭の中で、そして少年は口の中でくり返しつぶやいた。
盲目の少年は続けた。「そう。僕と彼女が互いに助けを求めてるように 君たちもお互い求めあった。さっき、“同じ”心と言ったけど、それは必ずしも正確じゃない。同じ志をもってると言った方が いいかもしれない。彼女を僕が受けとめ、僕が彼女に救われる。 そうして目指す方向はたった 一つなんだ。」 そう言って彼は天高くを指さした。
だがそこには暗闇があるばかり。青白い少年はあざけるように言った。
「何もないじゃないか!」
わずかに口がゆがんだ。子どももまたそう思っていた。 次の瞬間天につき出した盲目の少年の指先が光っていた。 頭の大きい子ども少年も自分の目を疑った。いったいどこから光がー
2人はあたりをその堅いそして重い表情で見まわした。しかしあるのは闇ばかり。盲目の子の光は次第に輝きを増し やがてゆっくりと下の方に下りてきた。
「この光はね目では見えない心で見える光なんだ。
あすこを見て。彼女も光に気づいたようだ。」
そう言う盲目の少年を取り囲む光はますます輝き、やがて全身を覆った。
瞬間、盲目の少年は見えない目を見開いた。
「えっ…。」
そこに目があった。
信じられないといった顔をしている青白い少年。頭の大きい子どもは、よろめきながら別の次元にいる少女を見た。
笑い声がした。明るくかろやかな、本当に楽しそうな…。彼女の小さな鼻の下に口がついていた。 同じ世界の同じ心の2人。 足りないところを補っただけではない、それ以上のものを2人は手に入れた。
「もう、さびしくなんかないね。」
ふと声が聞こえて…次の瞬間2人の姿はどこにもなかった。
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