第2話

2人は同じ場所にいることを確認しあった。


「君は誰?どうしてここにいるの 」

頭の大きい子どもがやっと口をひらいた。

「わからない」

少年は顔色ひとつ変えない。

「ずっと前からいたような気もするし、ほんの、ついさっきだったような気もする。ひとつはっきりしているのはここが天国の一歩手前だってことさ。」

「天国のー手前…。」

「そう。」

少年の顔にその年に不似合いな表情がうかんだ。 「僕も君もすでに死んでいる。だけど2人とも満たされていないんだ。何かが足りない。だから天国に行けないのさ。」

「何だろう…何かって。」


子どもは頭に枯れた手をやって考えこんでいる。 その姿は枯れ木のようで顔は老人のようだった。 何だろう、何だろう…考えるたびーつずつ子どもは忘れていく。 僕は誰?僕の名前は?年は?…考えるたびに一つずつ忘れていく。だけどそんなことはどうでもいいことだ。 子どもはふと顔を上げて少年を見た。何かひっかかる。

見たこともない。全く知らない。でも僕がこうして一つずつ忘れていっても彼はそこにいる。


未知の大木を切り倒し、木片にし、無駄なところを削り落とし、そぎ落としていくと、真の姿があらわれる。 子どもの考えはそんなところだった。 それが彼だ。だけどどうしょう。

長い思考の末、子どもは少年に言った。


「僕には君が必要な気がする。だけど、だけど、どうしたらいいの?」


少年は能面のような固い顔の目だけ表情をつけて答えた。


「君が本当にそう思うなら僕もさっきから考えてたことを言おう。ーそうさ、僕も君を求めてる。何故僕らはここにいるのか。そしてお互いなぜ不自由な不気味な体をもつのか、知る必要があるね。あれを見るんだ。」

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