復讐は蜂蜜のように甘かった 4ページ目

「ホント助かるよ奈乃ちゃん。それでね、みんなに相談、があるんだけど」


「はにゃ? 朱音会長、真剣な顔でどうしたのー?」


「私、その……追放したい先生が二人ほどいるんだけど」


「それは誰、かな。ボクの会長を傷つける先生なんて、生きる価値がないよ。だから、今すぐに追放すべきだと思う」


「朱音会長が嫌うほど、ひどい教師がいるのー? そんな不届き者を追放するなら、サキも協力するのだー」


「ありがとう、みんな……」


 この優しさに感動して涙が出そうだよ。


 一年前の私はずっと孤独だった。誰かに話しかけるのは、高難易度クエストに挑戦するのと同じ。ツンデレを学び始めてもそれが変わることはなかった。


 それなのに──。


 今、目の前には少ないけど仲間がいる。正直な気持ち、毎日が楽しくて仕方がないの。心の奥底では、復讐を諦めてもいいと思ったこともある。


 でも──私が復讐を捨てることはなかった。だって、この居場所がどんなに心地よくても、あの人たちがのうのうと生活してるなんて、私には耐え難い屈辱なの。


 理想は両方を手に入れることだけど、私はそこまで器用な性格じゃない。


 だから私は──復讐の道を選ぶしかなかったのよ。


「西園寺会長……? どうして泣いてるんですか?」


「な、泣いてなんかないわよっ。このリアコン王子っ!」


「──ぐはっ」


 クセで管君をビンタしちゃったけど、デリカシーないこと言うからよっ。私は──全然悪くないんだからっ。


 だいたい、私が泣いてるですって。


 そんなわけない、涙なんて私には存在しないのよ。


 復讐のためだけに生徒会長になったんだから。


 目的さえ果たせば、こんな居場所なんて──。


「ボクは会長がどこへ向かおうとしても、ずっとそばにいるよ」


「サキだって、あおいちゃんと同じ気持ちだよ。だから、ひとりで抱え込まないでよー」


「朱音先輩、お願いだから泣かないで。私がついてるから。だって私は──朱音先輩が本当の姉みたいだって、思ってるんですよ。だから、困ったときは妹の私を頼ってください」


 ずるい……よ、そんな風に言われたら、私、何も言えなくなっちゃうじゃないの。


 それに、今までずっとひとりぼっちだったから、こういうとき、どう反応していいか、わからないよ……。



 えっ、奈乃ちゃんからハグしてくるだなんて。


 温かい……これが人の温もりなのね。


 初めてかもしれないこの感触。



 奈乃ちゃんの優しさが心に染み渡って、推しを愛でてるような気持ちになるよ。拓馬とは手しか繋いだことがなかったけど、そのときよりも温かくて優しい感じがするかな。

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