復讐は蜂蜜のように甘かった 5ページ目

「もう、大丈夫、大丈夫だよ、奈乃ちゃん。本当にありがとうね。後輩なのに、いつも助けられてばかりだよ」


「よかった、元の朱音先輩が一番ですからねー」


「奈乃さんだけずるい……。ボクも会長を抱きしめたいのに」


「そ、それはまた今度ね、葵ちゃん」


「会長がそう言うならそうするよ」


「ありがとう、葵ちゃん。それでね、え、えっと、みんなには本当のことを話すよ。驚かないで聞いてね、実は──」


 私が以前奈乃ちゃんに話したこと。


 理事長に騙されたお金を巻き上げられたこと。


 生徒会長になったのは復讐のため。


 時おり悔しさを滲ませながら、私はゆっくりとした口調で、みんなに包み隠さずすべてを伝えたの。


「そう、だったんだね。許さない、ボクの会長をイジめるなんて、ふふふふふ、今すぐ地獄に堕としてくるよ。だから、会長は安心してここで待って──」


「葵ちゃん、実力行使はダメなんだからねっ」


「あぅ……。実力行使で止められたのはボクの方だよ。頭を叩くだなんて、会長の趣味はそっち系なのかな」


「ちっがーーーーーーう。私にそんな趣味はないからぁぁぁぁぁぁ」


「朱音先輩、善は急げですよー。明日にでも、そのクズ教師たちを裁判にかけましょうかー。確実に追放できるよう、私が全面協力しますのでー」


 奈乃ちゃんが悪魔の笑みを浮かべてるよ。


 でも、いつもの笑みというより、本気で怒ってるように見えるね。


 だって、背後からドス黒いオーラが漂ってるもん。


「あのね、サキに出来ることは、何かないですかー?」


「早紀副会長は、確か人望がかなりありましたよねー?」


「そだよー、サキはこう見えて人気者なのだー」


「では、お願いしたいことがあるんですー。あのですね──」


「了解なのだっ、なのちゃん。サキに任せてなのー」


 よく聞き取れなかったけど、二人で何を話してたんだろ。悪女奈乃ちゃんが考えたことだから、きっと聞くだけで後悔しそうな内容だよね。


 ふふふふ、なんだか仲間っていいよね。あの三人のせいで私は心に深い傷を負ったけど、この人たちと巡り合わせてくれたことだけは感謝しないとねっ。


「あれっ、ところでリアコン王子はどこにいったんだろ」


「なんか、難しい顔して出ていったよー」


「そっか……」


 べ、別に期待してたわけじゃないのよ。元々私の考えに反対ばっかりだったし? きっと今回もそうに違いないもん。どうせ、呆れて出ていっただけでしょ。


 ……やっぱり怒っちゃったのかな。


 そうよね、普通に考えれば、リベンジャーズの権利を利用した私的な復讐だもんね。


 怒るのは当然、だよね……。


「会長、元気がないみたいですけど、大丈夫?」


「大丈夫よ、葵ちゃん。ほら、この通り元気だからっ」


「朱音先輩、このあとの計画なんですけどー、何事も奇襲というのが大事なんですよー。そこで、明日のお昼は放送室に集合ということでいいですかー?」


「えっ、う、うん、わかったよ。でも、放送室でいったい何を……」


「私が書いた原稿を読むだけですよー。なので、何も心配しないでください」


「ボクも一緒に行くよ。何が出来るってわけじゃないけど、愛する会長のそばで応援したいんだ。ダメ、かな?」


「ありがとう、葵ちゃん。そばにいてくれると、心強いよ」


「ついに、ボクと会長が結婚する日が来たかな。式場は予約しておくね」


「ちっがーーーーーーうっ。だいたい、結婚は十八からだよぉぉぉぉぉぉ」


 いつもの葵ちゃん流ジョーク──だと思うけど、それのおかけで、私の中で燻っていた不安な気持ちは、綺麗さっぱり吹き飛んだ。

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