復讐は蜂蜜のように甘かった 3ページ目

「リアコン王子だけずるいよ。会長、ボクにもそれをやって欲しいかな。できれば口移しで」


「そ、そんなこと、できるわけ──」


「でも朱音先輩、リアコン王子にはやりましたよねー? 口移しじゃないけどー」


「うっ、そ、それは……」


「さすが奈乃さんだよ。ボクの味方になってくれるなんて」


「ま、待って、そ、そうだ、それは校内恋愛に含ま──」


「それを言ったらリアコン王子との時点で……」


 くっ、完全に逃げ場がなくなったよ。


 だいたい、口移しだなんて、たとえ同性でも恥ずかしすぎますっ。


 もうー、なんで私だけこんな目にあうのよー。


 ポジティブに考えればツンデレ効果なんだけど、なんか納得いかないよぉぉぉぉぉぉ。


「わかったよ、葵ちゃんとやるよ。で、でも、口移しじゃなくて、ポッキーを咥えるから、反対側からかじってねっ。お、折れたらそこでお終いなんだからっ」


「今日はなんて素晴らしい日なんだ。この記念日をぜひとも写真に収めたいよ」


「し、写真は絶対にダメだからぁぁぁぁぁぁ」


 こうなったら覚悟を決めるしかありません。まずはポッキーを咥えてっと……。こ、これはかなりの恥ずかしさだよ。うぅ、目なんて開けてられないから、閉じて静かに終わるのを待ってようかな。


 聞こえてくるのはポッキーをかじる音。


 緊張から胸が高鳴っていく。


 今にも飛び出しそうな心臓が心地良さを与えてくれる。


 それに、肌を掠める葵ちゃんの吐息がくすぐったい。って、まさか──。


「──!? んーーーーーーっ」


「あっ、折れちゃった。もう少しで会長の可憐な唇を奪えたのに、残念」


「こ、こ、これで終わりだからねっ。追加オーダーなんてダメだからねっ」


 顔が熱い、熱すぎるよ。


 きっと、ううん、絶対に真っ赤に染まってるし。


 教師追放という新たな歴史を刻む前に、私の黒歴史が刻まれるとは思わなかったよ。


「朱音会長、なんだか楽しそー。サキもやってみたいー」


「早紀先輩はダメですっ。そ、それよりも、新しい校則をポスターにして早めに掲示しないと、みんなが困るよね」


「それならご心配なくー、パソコン部の方々がすでに作ってますのでー。出来上がったら掲示までしてくれるので、私たちは何もしなくて大丈夫ですよー。ついでに言うと、新聞部も校内新聞に書くみたいですよー」


 奈乃ちゃんは相変わらず頼りになるよね。


 本当に心から感謝してるんだから。


 あの腹黒さえなければ好感度マックスなんだけどなぁ。


 でも、奈乃ちゃんから腹黒さを取ったら──何も残らなくなるね。


 新聞部は……うん、どうでもいいよ。あんなエセお嬢様が部長だなんて、いつか潰してやるんだからねっ。

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