真剣な話には笑いがつきもの 2ページ目

「ごめんなさいねっ。自主退学は禁止できないと思うよ。家庭の事情とかありますし、そこまで校則で縛るのはそもそも無理かなぁ」


「それでは、停学と退学の廃止、ならびに三十路リアコン量産制度を校則に入れますねー。きちんと、議事録にも書いておきます」


「待ってくださいーっ。三十路リアコン量産制度ってなんですかっ。僕の知らない間に何があったんですかー!」


「あっ、リアコン王子。詳しくは議事録を呼んでねっ」


「西園寺会長、誤魔化さないで、ちゃんと説明をしてくださいよー。だいたい、僕はロリコンなんかじゃ──」


「大丈夫ですよー、それも議事録に書いておきましたからー。でも、少し名前が長いのが気になりますねー」


「うーん、それなら、ミソリアコン制度とかどうかなっ?」


「ナイスアイデアです、朱音先輩。では、名前はそれにしますねー」


『意義なーし』


 多数決という数の暴力でゴリ押して、管君の意見を聞くことなく新しい校則が決まろうとする。


 でも、これだけでは復讐など到底無理な話。


 考えるべきことは、どうやってボランティア地獄へ追い詰めるか。


 それに、理事長と加地先生への復讐はまだ白紙なの。この二人も、上手く校則を利用したいところね。


「では、少しだけ休憩にしましょうか」


 一旦リフレッシュするため、数分間の休憩をとろうとする。適度な息抜きこそが、素晴らしい復讐方法を思いつける。そう心に刻みつけると、私はリベンジャーズルームをあとにした。もちろん、他のメンバー(新聞部の綾崎さんも)も外の空気を吸いに部屋から出ていった。



 ふぅ、いい息抜きになったね。さてと、リベンジャーズルームへと戻りますか。っと、中には誰もいないみたいね、まだ休憩から戻ってきてないのかな。


 あっ……カバンがテーブルに置きっぱなしだよ。誰のだろ……って、これは奈乃ちゃんのだよ。待って、落ち着くのよ朱音、あそこに見えるのは──。


「これって、奈乃ちゃんのスマホ、だよね。はっ、これはチャンスよ、きっと神が与えてくれたんだよ」


 今ならあそこに封じられてる、私の黒歴史を消し去れるね。


 ふふふふふ、休憩を挟んで私に流れがきてるよ。

 奈乃ちゃんには悪いけど、綺麗サッパリにリセットさせてもらいますか。



 息を飲み怪しげな動きで私はスマホへ接近を試みる。こそドロのように周囲を警戒しながら、ゆっくりした動きで、黒歴史が封印されているスマホを掴むことに成功した。


「これが奈乃ちゃんのスマホかぁ。ここに、私の黒歴史があるはず。でも、人のスマホを見るのはいけない、よね。うぅ、ここに来て迷うだなんて──」


「朱音先輩、何してるんですかー?」


「ひぃっ!? な、な、奈乃ちゃん、いつの間にいたんですかっ」


「私はずっといましたけどー。あっ、そのスマホは……」


 ピンチよ、一世一代の大ピンチ到来よ。まずい、このままじゃ、黒歴史どころの騒ぎじゃなくなっちゃう。どうにかして、この危機的状況を回避しないと。

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