第5話 真剣な話には笑いがつきもの

真剣な話には笑いがつきもの 1ページ目

「エスケープ対策なんだけど、ボランティアに期限を設けるとかどうかな? もちろん、期限内に終わらなければボランティアのおかわりだよ」


「ということは朱音先輩、期限内に与えられたボランティア時間が消化できなければ、時間を追加するということですかー?」


「その通りだよ奈乃ちゃん」


「ねー、マジメな議論だと、サキがつまんないよー」


「そこはマジメに議論に参加してくださいっ」


「ふぇーん、朱音会長に怒られたよー」


 甘えるように上目遣いで見つめるのは反則だよ。


 なんだか私が悪いことしてるみたいで……。


 そうね、そうだよね、早紀先輩のためならマジメに議論なんて──って、そんなわけあるかーーーーいっ! ダメよ、いくら萌え要素満載の顔とはいえ、それに屈してはいけない。たとえ、罪悪感という鋭いナイフが胸に突き刺さり、私の心に罪の意識を刻ませたとしても、心を鬼にしないとダメ、なんだから。


「早紀先輩、私は怒ってないから泣き止んでください」


「ほ、ホント……? 本当に怒ってないの?」


「これくらいで怒るわけないですよ」


「えへへ、それじゃ議論なんかやめて、サキと遊ぼうよー」


「……これはひょっとして、無限ループに突入したのかな」


「とりあえず、早紀副会長抜きで話を進めたらどうですー?」


「ふぇっ!? まさか、リベンジャーズでイジメだなんてー。サキを無視するとかひどいのだー」


『それなら議論に参加してください』


「うぅ、わかったのだ。サキもちゃんと参加するから、仲間はずれにしないでよー」


 全員からのツッコミで、さすがの早紀先輩も観念したのね。少し可哀想な気がしますけど。


 はっ、べ、別にこれが当たり前の姿なんだからねっ。必死で涙を堪える姿が可愛いからって、イジワルしてるわけじゃないのよ。本当にマジメな議論をしたいだけ、なんですから……。


「えっと、話を戻すと、奈乃ちゃんの言った通りがいいかなって、私は思ってるのよ。例えば、校則違反者は十日で二十時間の校内ボランティア活動が必要で、終わらなかったら元の二十時間の一割、つまり、二時間分を翌週に上乗せする感じかな」


「さすがボクだけの会長だよ。その案に大賛成するよ」


「あの、私は葵ちゃんだけの会長じゃ──」


「でも、朱音先輩、ひとつ問題があると思います。時間が残ってる人の進級とか卒業はどうするんですかー?」


「そこはちゃんと考えてあるよ。強制留年させればいいの」


「それなら私も賛成ですー。つまり、三十路リアコン量産制度というわけですかー」


 そっか、そうだよね、終わらなければ、管君みたいな人が増えるもんね。


 あれ、ということは、金坂学園が中年たちの学び舎となるのか。


 それはそれで、少し見てみたい気がするなっ。


「朱音会長ー、サキは質問がしたいのー」


「早紀先輩、どんな質問ですか?」


「あのねー、自主退学もなくなっちゃうんですかー?」


「まさか、マジメな質問が早紀先輩から飛んでくるだなんて……」


「ひどいよー、サキだってマジメにできるもん」


 さすがに、自主退学を禁止にはできないかな。それに、たとえ自主退学という選択をしても、『ボランティアに屈指て中退』という消えない傷が刻まれますし。どっちに転んでも、私の勝ちは揺るがないね。

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