生徒会役員は個性が強い 15ページ目

「さて、紛いモノは消え去りました。早紀先輩、話がだいぶ逸れましたけど、ペナルティの名案ってどんな感じでしょうか?」


「ふぁいっ、あのねー、サキが考えたのはねー、校内ボランティアでその罪を浄化させるのー。困ってる人を助けられるし、一石二鳥なのだー」


 ボランティアかぁ、それだと復讐とは無縁よね。


 だってどう考えても──って、そっか、そうのね、ボランティアという名の強制労働よ。ふふふ、終わることのない強制労働──じゃない、ボランティア地獄に落としてしまえば、拓馬の青春時代がタヒること間違いなしね。


「早紀先輩にしてはかなりの名案です。ご褒美にアタマを撫でてあげますね」


「わーい、ありがとうなのー。えへへ、朱音会長は優しいのだー」


「……副会長、完全に朱音先輩にもてあそばれてますねー」


「ふえっ!? そ、そうなのっ? 朱音会長はサキを騙そうとしたのー?」


「そ、そんなことないですよっ。早紀先輩を騙そうだなんて、少しだけしか思ってないんだからっ。でも、その愛くるしい笑みが見たいのは、本当かな」


「やっぱり朱音会長は騙してなかったのだー」


 自分で言っておいてなんですけど、単純すぎる早紀先輩が少し心配だよ。なんかこう、いつか変な人に騙されそうで……。


 そうよ、この抱き心地がよさそうな温もりは、この私が守らないとねっ。だってこの温もりは、私だけのモノなんですからっ。たとえ、世界を敵に回しても必ず死守してみせるもん。


「ペナルティにボランティアは賛成なんだけど、それだとやらない人がいそうだよね。ボクみたいにね」


「葵ちゃん、それは胸を張りながら言うことじゃないよ。んー、ボランティアをエスケープできなくする方法かぁ」


 それも大事だけど、まずはボランティア時間を決めないとね。仮に十時間とすると、一ヶ月あったらすぐ終わっちゃうかな。一日中数分やるだけでいいわけですし。


 はっ、それなら期限を設ければいいのよ。そうすれば、期限内に終わらせようと必死になるはずですから。ただ、期限内に終わらなかったら──。


「朱音先輩、何をさっきからぶつくさ言ってるんですかー?」


「ひゃっ!? 奈乃ちゃん、いきなり驚かさないでよ」


「驚かせたつもりはないんですけどー?」


「あははは、実は葵ちゃん対策を考えていたんだよっ」


「ボクに対策なんていらないよ。会長の愛を受け止める準備はできてるからね」


「その対策じゃなーーーーーーい! ボランティアのエスケープ対策だよっ」


「残念、そっちなのか……」


 肩を落とすほどガッカリするのね。


 どういう思考になってるのか、非常に気になっちゃうよ。でも、今ここでそれを聞いたら、話が混沌に陥るのは間違いないかな。



 好奇心を押し込めるのよ、朱音。


 まずはエスケープ対策が優先なんだから。


 ついでに管君のことも底なし沼に沈めないと。



 よし、厳重に心の鍵をかけたからもう大丈夫。あとは、ラベルに『パンドラの箱』と書いとけば、間違っても開けようとは思わないね。

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