生徒会選挙はツンデレで 7ページ目

「だいたい、学校は勉強するところよ。だから──」


 ──キーンコーンカーンコーン……。


 まさか、予鈴がこの戦いを邪魔するだなんて。


 ここから私のターンでしたけど、大いなる力に阻まれては引くしかないですね。


「今日のところは引いてあげます。か、勘違いしないでよねっ。勝負は始まったばかり、なんだから」


「それは、こっちのセリフですわ。わたくし、絶対に負けませんわよ」


 お互い同時に動き出し、そのまますれ違い逆方向へと歩いていく。私は一度も振り返らず、学校の外へと向かった──って、これから学校なのに、家に帰っちゃダメじゃない。


 しかも、荷物は教室にあるんだし……。


 危うく魔性の罠にハマるところでした。


 ダッシュよ、教室まで全力疾走よ、でないと、遅刻になっちゃうからぁぁぁぁぁぁ。



 持てる力をすべて出し、私は教室まで走り出した。途中で見えた舞星さんには目もくれず、遅刻という言葉だけが頭の中を占有していた。



「今日はちゃんと演説してたみたいですねー。二日連続で遅刻するかと思ってたので、少し残念ですよ」


 お昼休みの屋上で奈乃さんと過ごすのが、私の日課になりつつある。拓馬と付き合ってた一ヶ月を除き、お昼はぼっちなのが私の高校生活だった。


 寂しい青春時代を送る予定──ではないですけど、二人で一緒に食べるお弁当は格別なもの。


 たとえ、腹黒系悪女であっても、こうして話せる相手がいることに、私は涙が出るほど嬉しかった。


「期待に沿えなくてごめんなさい。じゃなくて、酷いよ、奈乃さん。そんなこと言うと、いくらツンデレをマスターした私でも、泣いちゃうんだからねっ。ぐすん……」


「朱音先輩……。本当に泣いているんですね。でも、ここで目薬は必要ありませんよ?」


「ちがーーーーう。目薬じゃなくて、ワサビを塊で食べちゃったんだよっ!」


「いつの間にドジっ娘属性まで手に入れたのですかー」


「私はドジっ娘じゃないもんっ。ぐすん、ちゃんとしたツンデレなんだからっ。ぐすん」


 ぐすん、涙が止まらないよ。


 お母さん……ワサビは程々にして欲しかったかな。


「ところで、あの演説内容の影響を受けて、朱音先輩の支持率が上がりましたねー。三時間かけて考えた甲斐があったというものですよ」


 ──ギクッ。


 そ、そういえば、演説なんてしてないよね。舞星さんと戦ってた記憶しかないんですけどっ。


 しかも、三時間って──実は使う余裕がなかったなんて、この笑顔の前で言えるわけないよ。


 どうしよ……。はっ、そうか、明日使えばいいんだよ。今日は上手く誤魔化してやり過ごそう。それがお互い平和だよね。


「えへへ、ホント助かったよ。ところで、どれくらい上がったんだろ。確かサイトで簡単に見えたよねっ」


 よし、これならバレないでしょ。


 べ、別に嘘をついてるわけじゃないもん。ただ、未来の出来事を前倒しにしただけだから。


 さてと、支持率はどれくらい──って、上がるには上がってるけど、この上昇率は喜んでいいものやら……。

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