生徒会選挙はツンデレで 8ページ目

「まさか、10ポイントも上がるとは思いませんでしたねー」


「う、うん。そ、そうだね。たった、10ポイント……。というより、奈乃さんはどれくらい上がると思ってたんですかっ」


「えっ、私は1ポイントでも上がればいいと思ってたけどー?」


 返して、罪悪感を感じた私の純粋な気持ちを返してよ。上がったのが1ポイントとか、やらないのと同じじゃないっ。


 ううん、そうじゃないよね、きっと照れてるだけよ。


 でも、どうして10ポイントも上がったんだろ。私は何もしてないのに……。


 だって、演説する前に舞星さんと──って、あれ、もしかして、あれが原因なのかな。きっとそうよ、『男のひとりやふたり』って言ってたやつしか考えられないもん。


 おそらく、それを聞いた女子たちから反感があったに違いない。魔性は男子にとっては魅力的だけど、女子には逆効果というわけね。


 つまり、舞星さんの自爆を誘えば、女子の票は私のモノになるということよ。


「1ポイントでも上がれば、私は嬉しいよ。で、でも、あの演説を実際にしたら、もっと上がるかもだねっ」


「んー? 『演説を実際にしたら』って、どういうことですか、朱音先輩っ?」


 はっ、やっちゃいました。


 私としたことが、魔性を自爆させる前に自分が自爆するなんて──。


 あれ、『自分で自爆』はなんか変だよね。


 そもそも自爆って──いやいや、そんなことを考えてる場合じゃないよ。なんとかこの場を乗り切らないと、弱みノートに刻まれちゃうからぁぁぁぁぁぁ。


「そ、それはね、未来の話をしてるだけなんだよ。今ここにいるのは、未来からきた私なの。だから、過去の存在である奈乃さんからすれば、まだ起きてないことなんだよ」


「つまり、私が三時間も費やした文章を使い忘れた、ということですかー」


「さすが奈乃さん、大正解っ! ご褒美にこの玉子焼きをあげちゃうよっ」


 鋭すぎるよ奈乃さん。


 でも、玉子焼きという、誰もが愛する食べ物を与えれば、きっとなかったことに──。


「玉子焼きありがとうございますねー。それで、私の血と汗と涙の結晶を使わなかったのは、私に苦痛を与えたかったためですかー?」


 できませんでしたぁぁぁぁぁぁ。


 お母さんの玉子焼きは、絶品だから楽しみだったのにっ。


 これでは、玉子焼きが失われただけという、私のひとり負けじゃないですか。


 やっぱり、腹黒系悪女は油断ならないよ。天使の笑顔を振りまきながら、美味しそうに食べてるし。


 だけど、忘れてたのは事実だからそれは謝らないといけないかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る