生徒会選挙はツンデレで 4ページ目

「な、奈乃さん、ご相談があるんですけど……」


「いいですよー。どうせ相談って、演説内容が考えられず、私に助け舟を求めた、と思いますけどー。仕方ありませんよ、寝て起きたら人心を掴むような演説を思いつくとか、朱音先輩はそう思っていたみたいですからー」


「こ、これ以上私にトドメを刺さないで欲しい、かな。私にM属性なんてないんだからねっ」


 やっぱり悪女は容赦なかったよ。


 でも、背に腹はかえられません。


 文才のない私よりも、奈乃さんの方が素晴らしい内容が思いつくよね。


 うん、これはズルではない。だって適材適所というやつだもん。


「そんなに落ち込まないでください。必ず私が、朱音先輩を生徒会長の座に君臨させてみせますから。そうしないと、影で操れないですからねー」


「後半はきっと冗談よね? でも、ありがとう。本当に助かるよ」


「いえいえー。では、文章が出来たらラインで送りますねー」


 持つべきものは後輩ね。たとえ、腹黒くて悪女であっても、奈乃さんは頼りになるよ。


 あれ、これって弱みじゃないよね。まさか、こっそりメモなんてしてないよね。


 うん、大丈夫そう、メモを取ってる気配なんてないかな。あとは、奈乃さんから送られてくるのを待つだけ。それを明日の朝に演説で言えば──私の支持率はうなぎ登りのはずよ。



 演説内容すら丸投げしたけど、私の心には爽やかな青空が広がっていた。今のところ自分の力でやったのは、立候補用紙を書いて提出しただけ。


 それでも、私は生徒会長になれば満足なの。


 だって、そこから二人への復讐劇が始まるのだから……。



「お風呂サッパリしたー。これで明日は寝坊しない気がするよ」


 夕食後にお風呂へ入るのが私の日課。


 一日の疲れを綺麗さっぱり流して、温かい湯船で心を癒すの。そして部屋に戻ったら、真っ先に推しのポスターを愛でるんだ。これがいつものルーティーンなんですけど、今日は机の上に置いてあるスマホが気になったの。



 あれ、ライン通知がきてるのね。誰だろ──って、奈乃さんからだ。きっと演説文書を送ってくれたんだね。さっそくだけど、書いてくれた内容を見ようかな。


 腹黒系の話術って、パソコン部の部長すら手玉に取るほどよね。どういう言葉を使っているのか、楽しみで仕方ありません。心がウキウキワクワクって感じだよ。


「えっと、ラインを開いてっと。あれ、ファイルで送られてきてるのね。ファイルにするほど、私のために一生懸命書いてくれたんだ。なんだかんだで、奈乃さんは優しいよ。腹黒系悪女だけどっ」


 スマホにファイルを保存してっと。


 あれ、え、えっと、保存したファイルってどうやって開くのよ。べ、別に機械音痴じゃないんだけど──って、保存しなくても開けるのね。


 さてと、なんて書いてあるのかな──。

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