生徒会選挙はツンデレで 3ページ目
「美味しかったー。ごちそうさまでたっ」
「それでは朱音先輩、朝の続きなんですけど、演説初日に寝坊は大物すぎると思いますよー。私みたいに、結果が決まってるわけじゃないんですからねー」
「そ、それは、あれですよ。果報は寝て待てって言うから、寝たらナイスな演説内容が出来上がってるかなって。そしたら、寝すぎちゃって、あはははは」
「朱音先輩……」
な、なんで哀れみの眼差しをむけてるの。
私、間違ったこと言ってないよね。『果報は寝て待て』って、寝てればいい結果が届くって意味じゃ……。
大丈夫、これには自信があるもん。
伊達に陰キャ時代を教科書と過ごしてないんだから。
ツンデレをマスターするまで、私の友だちは教科書だけ。
そう、友だちは──ぐはっ、思い出しただけで、クリティカルダメージが入ったじゃないの。
「あ、あの、奈乃さん、私、間違ったことは言ってない、よね?」
「そうですねー。間違ってるのは存在そのモノですから。ちなみに、『果報は寝て待て』というのは、やることをやったらあとはクヨクヨせずに待つ、そういう意味ですから。寝てればいいなんて意味は、ひとつもありませんよー」
「ふぁっ!? な、なんですと!」
真なる意味がそうだったなんて、知らなかったよ。きっと、私が見た教科書が間違っていたのね。
はっ、まさか──教科書が私を裏切ったのかっ。
唯一の友だちだと思ってましたのに。
いくら陰キャだからといって、嘘を教えていいわけがないよ。落ち着きなさい朱音、まだ試合は始まったばかり。だから、明日から頑張れば……。
「それと、現時点での支持率は、まし……舞星先輩が九割で、朱音先輩は一割となってます。よかったじゃないですか、一割も支持者がいて」
「な、なんで支持率とかわかるの? というか、一割……夢とは真逆の結果じゃないのー」
「学校のサイトから、一日一回投票できるんですよー。全生徒が投票してるわけではないですけど、今日の投票率は──七割を超えてますね」
「はうっ。一年もこの学校に通ってたというのに、このシステムを知らなかっただなんて。というか、去年の記憶が曖昧で……」
「仕方ないですよー。だってこれ、今年からなんですし」
遊んでるよね、絶対に奈乃さんは私で遊んでるよね。
でも今はそんなことより、一割しか私を支持してない方が大問題だよ。
ダメよ、諦めたらダメなんだから。
まだ勝負は始まったばかり、人心に響くような演説で巻き返しを──って、私にそんな才能はないからっ。
こうなったら、最終奥義を出すしかないね。
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