復讐の下準備と悪女な後輩 8ページ目

「奈乃さん、ここって演劇部の部室なんだけど、勝手に入って大丈夫なの?」


 放課後に呼び出されたと思ったら、なぜか奈乃さんに演劇部の部室へ連れていかれる。そこは、人の気配などまったくなく、私は悪女奈乃さんと二人っきりだった。


「部長が話のわかる方で、写真をみせたら、ふた返事で協力してくれました。なので、ポスター用の衣装とか勝手に持っていって大丈夫ですよ」


 写真って何かしら……。


 気になるけど、見たら後悔しそうよね。


 きっと、あのパンドラの箱という名のスマホから取り出したんだね。


 目的のためなら手段を選ばないとか、かっこいいよ。憧れるけど、私は悪女なんかにはならないし。なにせ私の名は、クイーン・オブ・ツンデレなんだからっ。


「ふ、深くは聞かないでおくね。でも、さすが演劇部よねー、色んな衣装があるよ。どれがいいのか迷っちゃうなっ」


「それならー、私が選んであげましょうかー?」


「へっ、奈乃さん……が?」


 わかる、私にはわかるよ。だって、イヤな予感しかしないんだもん。ポスターのためとか言って私に黒歴史を刻ませ、あのパンドラの箱の中へ放り込むのよ。


 さすがね、この発想には心から尊敬しちゃいます。


 どんなことでも弱みに繋げるなんて、悪女を極めた奈乃さんだからできること。


 ここは、主導権を取られたら──負けフラグが立つのは確実。先手必勝で流れを掴むのよ、朱音、ファイトー。


「当然ですよー。ツンデレに成り立ての朱音先輩には、荷が重いと思いますしー」


「そ、そんなことないですよっ。私だって、やればできる子なんですからねっ」


「そこまで言うなら、任せますよ。でも、センスがなかったら、私の独断と偏見で決めますからねー」


 落ち着きなさい、私なら絶対に大丈夫なんだから。


 たとえ、元陰キャであろうと、今は立派なツンデレなのよ。


 服のセンスだって──うん、私服は使えるお小遣いがなかったから、あれだけど。でも、ここに眠る数々の衣装は、お小遣いと関係ないの。


 だから、自分を信じればきっと──私の勝利に間違いないんだから。


「もちろんそれでいいよ。だって、私のセンスは神がかっているんだからねっ!」


 とは強気に出てみたものの、どれも一緒な気がするよ。


 ここは、ツンデレをイメージして──。

 はっ、そうか、わかったわ、ツンデレとはシンデレラの仲間。


 つまり、この場合の正解は──そうよ、この純白のウェディングドレスしかない。


 ふふふ、これで、パンドラの箱に黒歴史が封じ込められるのは、回避できたね。


 悪女奈乃、破れたり! お主の悪行も、このツンデレが終わりにしてあげるんだからっ。

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