復讐の下準備と悪女な後輩 9ページ目

「……決まったんですかー?」


「決まりましたよ。でも、今回は奈乃さんの出番がなさそうですね。このクイーン・オブ・ツンデレに相応しい衣装は──このウェディングドレスだよっ!」


 勝った、勝ったよマスターおなつ。


 私、ついに悪女を制しましたの。


 でも、これは始まりにすぎない。


 私の目標は、この学校で生徒会長に君臨し、復讐を果たすこと。


 だから、これぐらいで喜ぶ──って、奈乃さんの視線が痛いんですけど。お、おかしいな、私の選択が間違ってるはずないのに……。


「……朱音先輩。ま、さ、か、選挙ポスターで、ウェディングドレスを着るわけないですよねー?」


「ふぇっ!? も、もちろんその予定だけど……」


 あ、あれ……。待って、なんで、そんなにも哀れみの目で私を見てるのよ。


 この華やかさなら、どの衣装にも負けないはずなのに……。


「どこの世界に、ウェディングドレスで選挙ポスターを作る人がいるんですか。朱音先輩、結婚式場のポスターと勘違いしてませんかー?」


「はうっ、こ、これは、ちょっとした、ジョークだからねっ。そんな本気に……」


「まったく、ドヤ顔といい、ウェディングドレスといい。あっ、婚前にウェディングドレスを着ると、婚期が遅れるって迷信があるみたいですよー?」


 な、なんですって。


 そんなトラップが仕掛けられていたとは……。


 くっ……、悪女の罠にハマるなんて、一生の不覚です。


 まずい、このままだと、悪女の思うツボになっちゃう。こうなったら、ツンデレを使って上手く誤魔化すしか……。


「そ、そんなことぐらい、知ってましたよ。ちょっと、奈乃さんの知識を試しただけ、なんですから。そのために、これを選んだ、だけなのよ。だから、次、次が本番、なんだからねっ」


 よ、よし、これでこのターンは練習扱いになるはず。


 あとは、さりげなく次の衣装を選んで……。


「えっ、そんなこと、ダメに決まってますよー。では約束通り、私が衣装を選びますね。安心してください、ちゃんとしたのを選びますので」


 ダメでしたぁぁぁぁぁぁ。


 その『安心』が一番安心できないのに。


 ピンチよ、これは人生最大のピンチ到来です。


 なんとかしなければ、このまま私の黒歴史が刻まれちゃうっ。



 私が心の叫びをあげている間、奈乃さんはニヤけながら衣装を何着か選んでいた。それを持参した紙袋に詰め込むと、私を次なる場所へ連れていこうとした。


「今度はどこへいくのよ」


「空き教室に決まってますよー。そこで写真を撮るのです」


「えっ、き、今日撮るの!?」


「はい、カメラは写真部から借りてきましたし。あっ、教室には私と朱音先輩しかいないので、何も心配いりませんよー」


 だから何度も言い──じゃなく、思いますけど、それが一番の心配なんだってばぁぁぁぁ。


 もう、こうなったら、パンドラの箱に入る覚悟を決めるしかないかな。

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