復讐の下準備と悪女な後輩 7ページ目

「では、公約も決まったことですから、早速ポスター作りに取り掛かりましょう」


「私の手伝いばかりだけど、奈乃さんの方は大丈夫なのかな?」


「私の方は何もしなくても、当選が確定しているので平気ですよ。まぁ、一応、げぼ……有志の人たちが色々とやってくれてますからね」


 入学して間もないのに、すでに下僕までいるとか、なんて恐ろしい一年生なの。


 というより、当選が決まってるっていったい……。


 まさか、弱みノートを使って脅してるのね。


 やっぱり奈乃さんは悪女を極めてるよ。


 世が世なら天下に名を轟かせているに違いないね。


 うん、きっとそうだよ、第六天悪女神崎奈乃とか、言われること間違いないかな。


「あれ、奈乃さん。弱みノートに何を書いているんですか?」


「いえ、大したことではありませんよ。朱音先輩が私のこと、悪女なんて呼んでたぐらいしか書いてませんからー」


「べ、別に悪女なんて言ってないわよ。ただ、時代が時代なら、奈乃さんは第六天悪女と呼ばれて──はっ、まさか、カマをかけたのねーーーーーっ!」


「やっぱり、ね。でも、私はそんなこと気にしないので、ポスターの話に移りましょうよー」


 気にしてないわけないじゃなーい。


 この短時間でスリーアウトどころか、弱み貯金までできるなんて、これが悪女の極みなのね。


 でも、負けてられないもん。


 悪女なんかよりも、ツンデレの方が勝るんだからっ。


 そうよ、私はこのツンデレで生徒会長の座に君臨し、復讐を果たす使命があるのよ。


 だって、ツンデレを制す者は世界を制するんですから。


「ところで、ポスターってどんな感じのがいいんだろ。やっぱり、スーツ着てドヤ顔決めてるヤツとかな……」


「ふっ、これだから元陰キャは……。スーツは百歩譲っていいとしたも、どの世界にドヤ顔で選挙ポスターを作る人がいるんですか」


「も、元陰キャは関係ないじゃないっ。それに、これは……そうよ、奈乃さんを少し試したのよ。本当に、それだけ、なんだから……」


「まぁ、それでいいですけどねー。何を着て写真を撮るかは、私に考えがあるんですよ。だから、任せてもらえませんかー?」


「それは助かります。でも、衣装とかってお金がかかるんじゃ?」


「そこは大丈夫です。演劇部という、私の忠実な下僕たちから借りる予定なので。カメラとかポスター制作とかも、手足となってくれるファンがいるんですよー」


 『下僕』とハッキリ断言してますし。


 もはや隠さなくなりましたね。


 きっとファンの人たちも、奈乃さんに弱みを握られこき使われるのね。


「それは助かります。私、奈乃さんと出会えて感謝してるんですよっ」


「あ、ありがとう。でも、褒めたところで、弱みノートからは消しませんけどー」


「くっ、奈乃さんのケチー」


 この日はこれで解散となった。


 帰り道で思い浮かべるのは奈乃さんとの会話。


 私が学校であんなに話すのは多分初めて。


 性格は腹黒く悪女という言葉が似合うけど、きっと根は悪くない子だと思う。


 だって、私はフラれてかなりショックだったの。


 だから奈乃さんは、それを見て元気づけようと、私に近づいてきたんだろうね。


 奈乃さんは確かに悪女だけど、でも、私は嫌いにはなれない。年下だけど頼れるお姉さんって感じかな、悪女だけど。


 これ、大切なことなので二度言いました。いえ、『思いました』ですね。


 そんなことを考えながら、私は推しの待つ家へと早歩きで帰っていった。

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