復讐の下準備と悪女な後輩 6ページ目

「朱音先輩をイジるのはこれくらいにして、復讐とか面白そうですね。確かにツンデレ属性は最強ですし、いっそのこと、ツンデレを広める、みたいな公約とかはどうでしょう?」


「さすが奈乃さん、優しくて頼りになるよ」


「私は優しいですよー。悪役系よりも腹黒いですけどね」


 うぅ、聞こえてたよー。


 この爽やかな笑顔が今は怖いんですけどー。しかも、なんかメモしてるし。


 えっ、メモ……。


「あ、あのー、奈乃さん。何をメモしてるんですか? きっと、公約を忘れないよう、メモしてるんですよね」


「お気になさらず、大したことではありませんので。そんな、ツンデレ系先輩が可愛い後輩を腹黒呼ばわり、だなんてことは一切書いてませんので、安心してくださいね?」


 煌めく笑顔で否定してるけど、絶対に書いてるよね。


 しかも、時計を見て時間をまで書いてるし。


 こうなったら、いつかスキを見つけて、データを消さないと……。


 ん? えっと、これで弱みって三つ目だよね。数え間違いじゃないよね。いくらなんでも、スリーアウトが早すぎるよぉぉぉぉ。


 でも、今は生徒会長になるのが優先。まずはスタートラインに立ってから、この件をどうするか決めるとしましょうか。


 うん、それまでは保留よ、保留。気持ちを切り替えていかないとね。


「安心できないけど、今だけは安心しておくよ。話を戻すけど、公約に『ツンデレを広める』はいいよね。ツンデレは、愛と平和の象徴なんですから」


「珍しく、元陰キャの朱音先輩と意見が合いそうです。私もツンデレは脇役でなく、主役になるべきだと思うんです」


「奈乃さん……。元陰キャを前につけたらダメェェェェェェ! でも、ツンデレが主役だと思ってくれて嬉しいよ。そうよね、ツンデレこそが──」


「はい、朱音先輩と同じなんです。人気がありすぎて、周りのヒロインを敵にまわしたり、落ちるところまで落ちても、脇役にしがみつく哀れさが私は好きなんですよね。あっ、朱音先輩は人気ではなく、陰気でしたね」


「ちがーーーーーうっ。だいたい私は陰気じゃなーーーーーいっ。それと、言い方に悪意を感じるからっ」


「もちろん、冗談ですよ、冗談。本気にするあたり、朱音先輩をからかい……いえ、朱音先輩の可愛いところですよー」


「あの、『からかってる』って言おうとしたよね? 可愛いとか、棒読み感ハンパないんですけどっ」


「それは、朱音先輩の聞き間違いですよー」


 奈乃さん、絶対楽しんでるよね。


 あの顔だって、笑いを堪えてるもん。悪女よ、本物の悪女がここにいるよ。


 ここで逃げたら──ツンデレ貧乳の名が広まってしまうこと間違いなし。それだけは、なんとしても阻止しないと……。


 これはきっと、クイーン・オブ・ツンデレに与えられた試練ね。この悪女奈乃さんを制御すれば、私に明るい未来が待ってるはずなんだからっ。

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