03
「はっ」
ひとしきり語り合い満足していた頃に、私は正気を取り戻した。何を言っていたんだ私は。イケメンの仲良し二人組はほぼBLで間違いないとか、BLが似合うのはイケメンとか、理論的でも何でもない事を言っていた。そんな事でリアルBLカップルを、突き止められる物か。妄想ではなく現実のBLカップルが目の前にいるのだ。意地でも正体を突き止めたい。
「トモエ氏よ、妄想もいいが、理論的に考えてみよう」
「え、えぇ」
明らかに不満そうな表情を浮かべるトモエ。もう、それでいいじゃないか、と言いたげな表情だ。それとも理論的なんて言葉を持ち出したら、場が白けるとでも思ったのだろうか。トモエは少し考える素振りをした後、思いついたように口を開く。
「そ、そんな事より!」
そんなに頭を使う事が嫌なのか。そうリアルBLカップルについて興味がないかのような口ぶりで言った後、トモエは自分のスマホの画面を見せてくる。そこにはテレビ画面を録画したらしい動画が映し出されていた。
「ききき、昨日のアニメの、このこ、このシーンよかった事ない?!」
興奮しすぎて、吃りが少し激しくなっている。スマホをよく見ると、昨日私も視聴したアニメのワンシーン、主人公男が友達の男に怒って壁ドンをするシーンが映っていた。明らかにそういう事を匂わせていると思う。BLアニメではないから、そこから発展することは無いけど、全国の腐女子たちのオカズとして役立ってくれるアニメだ。
結局私は、またもや妄想の方に傾いてしまった。
「わかる!」
私は大いに同意する。私も実はスマホでテレビ画面を録画したのだ。いつでも見られるように、そして妄想のオカズとするために。私たち二人は同意し合った後「でゅふ、でゅふ、でゅふ」と笑う。その間もトモエのスマホは動画が流れていて、音声が聞こえてきていた。
「ロッカーに入ってたこれ、なんだよ!」
壁ドンをしている方のキャラの声。どんなシーンだったか。興奮しすぎて、何に怒っていたのかあんまり分かっていなかった。私はトモエのスマホから聞こえてくる音声に集中してみる。
「ッ!」
聞こえてきた音声で、私の中に閃くものがあった。そういう事か。この状況なら、いろいろ説明がつくのではないか。すぐさま私は、トモエの腕を掴んでスマホを覗き込んだ。
「なっ、なっなに?!」
トモエが驚いて手を引こうとするが、私は構わずスマホを見つめ続ける。猛烈な勢いでストーリーが出来上がっていった。
「これだ、これなら消失は可能だ」
私はトモエの腕を放して、自分のスマホを手に取る。出来上がったストーリーを補完するためにネットである情報を検索する。しっかり覚えているから検索するのに困らない。出てきた情報を見て確信に変わる。
「思い返してみればそうだった、なんで気付かなかったんだんだか、トモエ氏も私も知っていたはずなのに」
「ど、どういう? な、なに?」
突然の私の行動に、トモエは目を白黒させている。私は少し興奮気味にトモエに向かって口を開いた。
「リアルBLカップル消失の謎が分かったよ」
「え!」
私の言葉にトモエはついてこれていない、という感じの表情だ。
「ど、どうやって、き、消えたの?」
トモエの問いかけに、私は首を横に振る。
「今説明すると二度手間になる」
「に、二度手間? な、なんで?」
「イオリ氏にこの話をするからさ」
「ど、どういう事? ぜ、全然分からない」
トモエは混乱しているらしかった。まぁ仕方がない事ではあるが。でも同じ話を何度もする事をほ億劫なことは無い。それに、この話はイオリにしなければならないだろう。実は証拠もないから、その場で証拠を引き出さなければならない。
「とりあえず、明日の放課後イオリ氏をここに呼び出そう」
「え?え? 呼び出す? と、というよりどうやって呼び出すの」
混乱の極みであるトモエはそんな疑問を投げかけてくる。私はニヤリと笑って返した。
「イオリ氏は体育の着替えを保健室でしているのだから、先生に伝言を頼めばいい、それにイオリ氏を救ってやらねば」
おそらくイオリは置かれた立場によって、いろいろ苦しい思いをしていると考えられる。その苦しい思いは今回の真実を突きつける事で、ぶっ壊せるだろう。殻を破ってやるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます