飯を食ったでな、ログインしてみるかぇ。

さなえさんに抱えられながらの、老人介護施設へて辿り着いたわけじゃが…部屋へ直行し靴を脱ぎ、歩行補助機を外したらの、炬燵まで、さなえさんが抱えて連れていってくれたわえ。


夕飯がの、すでにできとるそうでな、 冷める前に持ってくるのじゃと。


施設内には食堂もあるんじゃが、儂は部屋で食べたいでな。

ゆえに部屋へ料理を運んでもろぅちょるわけじゃてな。


儂が炬燵へと収まるとじゃ、さなえさんが部屋の外へとの。

儂の夕飯を受け取りに行ったのであろうな。


この歳になるとじゃ、固形物よりも汁物を好むようにの。

冷めたら味が落ちるゆえ、出来立てを食べさせようとしてくれておるわけじゃ。


この料理にはのう、延命薬といわれておる薬が混ぜられておってな、これが長生きの理由じゃったりするんじゃよ。


百年以上前のことじゃ、最後の秘境と呼ばれておるアマゾンの奥深くに存在する洞窟にての、新種の苔が見付かったそうな。


その苔を研究しておった研究機関にて、実験用マウスの延命が確認できたのじゃそうな。


それから数十年…金持ち連中を優先的に被験者を募り実用化へとの。

じゃが…害がないことは間違いないことは解ったのじゃが、延命効果が必ずしも得られるとは限らんかったのじゃ。


そこでの、一般にも被験者を募ってのぅ。

当時70代じゃった儂も試しにの。

親族や友人には止められたのじゃが、どうせ独り者じゃてな、軽い気持ちでのぅ。


まさか適合して、この歳まで生きることになるとは、思いもせなんだわい。


おや、さなえさんが戻ってきたようじゃな。

ふむ、今日はミルクシチュー粥のようじゃのぅ。


具材は細切こまぎりになっており、長時間煮込んだのかトロトロじゃ。

さまざまな具材の味が溶け込んだミルクシチュー粥は、絶品っといえよう。


総入れ歯の儂が、入れ歯なしでも食べれるほどに、柔らかく煮込まれておるからのぅ。


この歳では、量は食えぬでな。

ゆえに小量で、いかに栄養を補給できるかをの、考えてくれておるわけじゃて。


食事を無事に終えたでのぅ、お待ちかねのVRゲームでもするかぇ。


バイタルチェックもしてくれるでな、風呂など以外は付けっぱなしにした方が良いらしゅうてのぅ。

ゆえに外さずに付けっぱなしなわけじゃてな。


っというわけでじゃ、早速ゲームへログインをしてみるかのぅ。


さなえさんは、夕餉ゆうげの後始末として、食器を下げてくれとるでの、今の内にゲームをばしようとのぅ。


ログイン指示は脳波感知にて行われるそうなのじゃが、横になっておく必要があるんじゃと。

じゃからの、炬燵に入ったままでゴロリとのぅ。


ゲーム、リトルエデンへログインするぞぃ、っと念じるとじゃな、急な睡魔に…


……… ……… ………ここは…どこじゃ?


上は雲1つない晴天じゃな。

透き通るほどの青空じゃて。


下は…コンクリやアスファルトではないのぅ。

土や芝生などでもないのじゃ。


真っ白じゃ。

ふわふわっとした…そう、まさに雲に乗っとるようなイメージじゃといえば良かろうか?


辺りを見回しても誰もおらん。

一体全体、どがぁなっちょるんじゃろか?


そがぁ思っちょるとの、

「お待たせしました」っとな、誰かが後ろから話し掛けてきたんじゃよ。

どなたさんじゃろか?


いぶかしく思ぅて振り替えったらじゃ、凄い別嬪さんがの。

金髪青目のグラマーさん。

服装が独特でな、古代ギリシャ人がの、身に纏っておったトガというものに似た服をのぅ。


ただの。

頭の上の輪っかと…背中に1対の翼が…

天使?


っうことは…

思わず涙がのぅ。


そうかぇ、とうとう、お迎えがのぅ。

長生きしたけぇ、仕方あるまいの。

いきなりのお出迎えにの、気持ちが付いていかなんだわい。


したらの、天使さんがあわててのぅ。


「ど、どうなされました?

 なにか、悲しいことでも?」っとの。


じゃてな。

「いやのぅ、余命がな、それほどないとは思うておったのじゃが…

 今、天使様のお出迎えがあるとは、思わんでのぅ…

 思わず涙が出てしもうたわけですじゃ」


ゲームへログインしたつもりがの、まさか身罷みまかって天使様がお迎えにこられるとは…思ってもみなんだわぇ。


そう告げたらじゃ。

天使様があわてての。

「いえっ!違いますよっ!

 ゲームのリトルエデンへ初期ログインされたところですからっ!

 今からゲームの初期設定を行うところですから」っと…

な、なんと…紛らわしいわっ!!

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